
2026年1月に警視庁に設置された、幸平一家の特別対策本部(写真・共同通信)
「借りているアパートの大家のところまで、警察が聞き込みに来ました。事情を知ったうえで貸してくれていたんですが、“新暴対法” もあるので、たぶん契約解除になるでしょう……」
そう頭を抱えるのは、指定暴力団・住吉会二次団体「幸平一家」系の現役組員だ。いま、警視庁がこの幸平一家に対し、異例ともいえる “殲滅作戦” を展開している。
2026年1月、警視庁は同団体を標的にした特別対策本部を設置。本部長には副総監を据え、専従捜査員は70人以上。暴力団対策としては、近年まれにみる大掛かりな布陣だ。
大手紙社会部記者が解説する。
「二次団体への大規模対策本部は、かなり久々となります。以前でいえば、六代目山口組の司忍組長の出身組織・弘道会に対して、愛知県警に設置されたケースがあります。警視庁幹部は、周囲に『幸平が壊滅するまでやる』と語っています」
全国の暴力団員数は、暴力団対策法などの影響で減少を続けている。2009年までは8万人を超えていた構成員も、2025年末には1万7600人程度にまで減った。しかし、その一方で勢力を拡大していたのが幸平一家だ。
新宿・歌舞伎町を中心に強い影響力を持つ同団体は、近年、“半グレ” 勢力を取り込みながら、資金力を急速に強化してきた。
「関東連合系のグループや、中国残留孤児2世らで構成されるチャイニーズドラゴンなど、いわゆる半グレ集団を傘下に収め、違法カジノ、風俗、スカウト事業などの利権を掌握していった。結果として、歌舞伎町の裏社会マネーが一極集中した形です」(同前)
警視庁が特に警戒しているのは、その資金が “トクリュウ”、つまり「匿名・流動型犯罪グループ」へ流れ、さらなる犯罪を重ねることだ。海外拠点を利用した特殊詐欺や、SNSで若者を募る “闇バイト強盗” が幸平一家の主導でおこなわれていると疑っているのだ。
「昨年の特殊詐欺事件で逮捕された暴力団組員らのうち、約4割が幸平一家関係者だったと言われています。警察は、たんなる繁華街利権の問題ではなく、新しい “犯罪インフラ” の中核と見ているわけです」(同前)
取り締まり強化を受け、幸平一家側も “組織防衛” を強めている。前出の組員が明かす。
「いまは毎日、決まった時間に連絡を入れる決まりです。もし連絡がなければ、“警察にやられた” と判断される。その人間に関係する書類は、どんな内容でも全部処分することになっています」
警察が導入を進める「身分秘匿捜査」や「おとり捜査」への警戒感も強いという。
「特にスカウト関係は、新人をほとんど入れなくなった。現場では毎日のように逮捕者が出ていますが、周囲から見たら誰が警察官で誰が逮捕された側なのかわからない状態です。昔ながらのシノギは、かなり潰されています」(前出・組員)
もっとも、歌舞伎町の地元関係者のなかには、警視庁の “幸平潰し” に複雑な思いを抱く者も少なくない。理由は、六代目山口組の存在だ。
近年、六代目山口組系幹部が都内老舗団体を事実上継承し、歌舞伎町近辺に拠点も得た。関西最大勢力の“東京進出”計画が現実味を帯びているという。幸平一家は、20年以上、歌舞伎町をほぼ独占してきたが、その均衡が崩れればどうなるか。
「幸平一家が消えれば、裏社会に “空白” が生まれる。その席に座るのが、全国規模の六代目山口組系団体になる可能性は十分ある。警視庁は、歌舞伎町との連絡協議会で『両方ともやる』と言っていますが、相手は全国組織ですからね。幸平一家とは規模が違います。中途半端なまま終わることを、一番恐れています」(前出・社会部記者)
歌舞伎町の “支配構造” は、いま大きな転換点を迎えている。
![Smart FLASH[光文社週刊誌]](https://smart-flash.jp/wp-content/themes/original/img/common/logo.png)







