
参政党の神谷宗幣代表(写真・長谷川 新)
「現場は本当にカオスな状態でした……」
呆れ顔でこう語ったのはルポライターの昼間たかし氏。彼が言及したのは、5月16日に東京大学の学園祭「五月祭」で起こった騒動だ。社会部記者が解説する。
「開催前から注目されていたのが、参政党の神谷宗幣代表の講演でした。同大学の学生団体『右合の衆』がこの講演を主催すると発表すると、賛否が巻き起こり、ネット上でもさまざまな意見が飛び交っていたのです」
一部では中止を呼び掛ける声も上がったなか、16日に講演会当日を迎えた。だが、結果として講演会は中止。さらに主催者に爆破予告が届いていたこともあり、16日の催しは15時過ぎにすべて打ち切られるという前代未聞の事態になった。
しかし爆破予告が届く以前から、東京大学内ではすでに“異様な光景”が展開されていた。現場を目撃した昼間氏が語る。
「講演開始の3時間前、9時ごろから、会場前では有志の学生たちが座り込みを始めていました。彼らの目的は講演の中止ではなかった。講演で、差別的な発言を講演で行わないこと。そのために、誓約書を作成し神谷氏に誓約書に署名してもらうよう求めていたわけです。誓約書には、過去の発言を踏まえて『差別を扇動するような内容を話さない』といった内容が具体的に書かれており、東大憲章に則ったイベントにするよう求めていました」
事態が動いたのは11時頃。参政党関係者とみられるスーツ姿の男性陣が20人ほどが現れ、誓約書を「私の段階で拒絶します」と言い放ち、写真だけ撮って受け取りすら拒否したという。
「そのまま参政党員とみられる一団は座り込みを強行突破。この時の混乱で、学生の持っていたトランシーバーが壊されたり、いささか緊迫した雰囲気になりました」
強行突破してしまえば、講演会が開催できると思ったのか……。しかし、この後から本当の“珍事”が始まる。昼間氏が続ける。
「学生たちを突破した20人ほどの面々ですが、教室の鍵が開いていなかったのです。なので、突破してもそれ以上何かできるわけでもない。結局“開かずの教室”の前で立ち往生するしかありませんでした。結局、会場前の廊下でたむろして、イラついた様子で、周囲を威圧するしかなくなったったんです。『こういうことをされると暴力を振るうしかなくなる』『顔を覚えたぞ』といった言葉も、学生に投げつけていました。開催の可否の権限をもっている五月祭の実行委員たちもいるところで、到底学生には見えない男性らが、若者に『顔を覚えてぶち殺す』とまで言い放つ始末です。昭和のブラック企業かと思いましたよ」
さらに初老の男性の一人は、昼間氏をはじめとして集まってた取材陣にも「写真を撮るな」と矛を向けてくる始末。しかし「どういう権限で、撮影を拒むのか。あなたは五月祭の実行委員なのか」などと詰められると黙り込んでしまったのである。
「参政党といえば、関係者が路上の演説会などで反対派に対して威圧する姿がSNSで拡散されることもありますが、今回はいつもよりも弱腰でしたね。動員された彼らも、東大はアウェイ感が強かったのでしょうか。次第に集まってきた参政党に反対するカウンターのほうも同様な感じで、率先して突入したりなどはしていませんでしたね」
こうして、講演会が開会予定の12時を過ぎても、教室の鍵が開かないまま時間だけが過ぎることに……。13時を過ぎて五月祭実行委員会が中止になったから退去してほしいと呼びかけ、集まった面々は退去することになった。
威圧的な態度を見せていた20人ほども会場を出ていったが、なぜか「宿敵」であるはずの、カウンターの面々が集まっているすぐ横で、解散前の打ち合わせを開始……。「もう少し離れたところでやるものではないのか」(昼間氏)と違和感をぬぐえなかったという。
今回の騒動をめぐっては、ネット上では「言論弾圧だ」「大学の自治が侵された」などと多様な受け止めが見られる。そうした中で、現場を味わった昼間氏は、この“珍騒動”に何を思ったのか。
「そもそも招いた学生団体も参政党も、本当に講演会をやる気があったのか、甚だ疑問です。講演会を開催したいのであれば、座り込みをしている学生も含めて『多様な意見を聞く』などと言い含める努力はするでしょう。求められた誓約書にだって、サインはしなくても『差別発言なんかしませんよ』などといって、折り合いをつけるはずです。ところが、そうはせずに党関係者と思われる人たちがただ威圧するだけ……参政党自体の問題解決能力の乏しさに呆れてしまいました。なんでも『強行突破だ!』で解決するのはマンガだけですよ」
さらに、昼間氏は神谷氏を招いた学生たちに、こんな苦言も。
「座り込みは9時から始まってますよね。そもそも12時から講演会を始めるとしたら、9時には集まって、音響機材をチェックしたり作業をするものでしょう。特に、貸しホールじゃない単なる教室ですから、設備のチェックは重要です。講演会の内容や彼らの思想以前に、そもそも現場を回す能力が欠けていたんじゃないでしょうか」
昼間氏が目撃した、党関係者から発せられたとおぼしき“暴言の現場”について、参政党に見解を聞いたが、期日までに回答はなかった。
騒動の根本は、差別や学生自治以前の問題だったのかもしれないーー。
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