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雲行きが怪しくなってきた「米朝首脳会談」日本抜きの舞台裏

社会・政治 投稿日:2018.05.24 08:00FLASH編集部

雲行きが怪しくなってきた「米朝首脳会談」日本抜きの舞台裏

 

 6月12日にシンガポールで開催されることになっていた米朝首脳会談の雲行きが怪しくなってきた。

 

 ホワイトハウスを訪れた韓国の文在寅大統領との記者会見で飛び出したのが、トランプ大統領の発言である。

 

「どうなるかわからないね。今回ダメでも、次がある。交渉(ディール)なんて、そういうものさ。ダメ元で臨んだら上手くいったことも多々あったしね。こちらの条件が満たされなければ、とりあえず首脳会談はありえない」

 

 文大統領は必死でトランプ大統領を持ち上げ、「米朝首脳会談を成功させ、世界の歴史に名を遺す偉大な功績をあげていただけるものと確信している」と、自らがお膳立てしてきた米朝首脳会談の実現に望みを託した。

 

 鄭義溶国家安全保障室長も「99.9%の確率で予定通り米朝首脳会談は開かれるものと思う」と記者団に語った。

 

 ポンペオ国務長官も「シンガポールでの首脳会談に向けて万全の態勢で準備を進めている」と援護射撃に努めていた。なにしろ、ホワイトハウスではトランプ大統領と金正恩委員長が向き合うデザインの記念コインまで製造し、実現すれば史上初となる米朝首脳会談を盛り上げようと動いてきたのだ。

 

 水面下を含め、さまざまな努力と準備が重ねられてきたにもかかわらず、なぜ直前になり「延期」あるいは「中止」という話になってきたのだろうか。

 

 北朝鮮に言わせれば、「米韓合同軍事演習に核搭載可能な戦略爆撃機B-52を投入したのは、わが祖国に対する先制攻撃の意図がありありで、先の板門店宣言の南北和平合意の精神を踏みにじるもの」というわけだ。

 

 実は、その板門店での南北首脳会談の席上、文大統領は金委員長に密かにUSBを渡していた。中身は「朝鮮半島における新たな経済発展の見取り図」で、3正面における南北の経済協力の未来が描かれていた。

 

 第1正面は中国、第2正面はロシア、そして第3正面が韓国である。将来の南北統一に備え、これら3正面にそれぞれ経済発展特区を建設するという計画だ。

 

 中国との間では黄海をまたいで海底トンネルを、ロシアとの間では新たな鉄道を建設することで物流拠点を整備し、朝鮮半島を軸に、中国、ロシアを巻き込んだ、新たな経済圏を誕生させるというもの。

 

 中国の進める「一帯一路計画」とロシアの提唱する「ユーラシア経済圏」構想の連結点の役割を統一朝鮮が担うというアイディアである。

 

 金正恩委員長は先の大連での習近平国家主席との会談で、こうした構想を進める上での理解と協力を要請した。どうやら習主席はお墨付きを与えたようだ。

 

 中国もロシアも北朝鮮の核兵器保有を快くは思っていない。そのため北朝鮮が放棄するというなら、段階的であろうとも、経済制裁は解除し、新たな経済発展を支援する意向を示したに違いない。

 

 金正恩にとっては、トランプとの首脳会談で、願ったような「見返り」が期待できないなら、「中国、ロシア、韓国との経済連携に乗り換える」という選択肢もある。

 

 金正恩の強気とトランプの怒りの背景には、こうした表と裏の駆け引きが隠されていた。問題は、文大統領のUSBに日本は含まれていなかったことだ。(国際政治経済学者・浜田和幸)

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