
中国共産党創建105周年を迎えメッセージを発する習近平
6月26日、中国・北京では異例の大事件が“静かに”起きていた。109階建ての超高層ビル「CITIC(中国中信集団)タワー」に小型機が衝突したのだ。ビル側面に穴が開き、パイロットが死亡。地上にいた13名がケガをしたという。
「穴はすぐに塞がれ、事故直後はSNS上でバラバラになった飛行機の残骸や、衝突した瞬間を捉えたと思われる動画が拡散されましたが、すぐに削除されました。事故機は中国製の2人乗り単発機だったとされています」(大手紙記者)
高層ビルに飛行機が突っ込むーー。9.11事件を想起させる事態に、ネット上では瞬く間に“自爆テロ疑惑”が広がった。
「パイロットの素性すらわからず、一時期は中国空軍の軍人による“クーデター”という真偽不明の説すら流れました。2日になり、ようやく政府はパイロットは北京に住む66歳の男性だったと発表。そして『個人的な原因』による事案だったと結論づけました」(同前)
とはいえ、「政治的な意図があった可能性はある」と指摘するのは、講談社特別編集委員で中国事情に詳しい近藤大介氏だ。
「じつは私は、あのビルの隣に3年ほど住んでいたことがあるで、驚きましたよ。なぜ“政治的な意図”が考えられるのかというと、まずあのビルは、北京出身の習近平を象徴するビルなのです。このビルは、『中国尊』とも表記され、世界で8番目の高さを誇ります。習政権の“成功”を表わしており、このビルが完成して以降、高層ビルを作るのは禁止されました。東京で言えば、スカイツリーのような国の威信をかけた建築物だというわけです」
また、事件が起きた“時期”も関係しているという。
「事故直後の7月1日は、中国共産党創建105周年でした。政府が威信をかけた大きなイベントの前後にはこうした犯行がよく起こるのです。
2013年には、三中全会(中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議)という共産党の重要会議が開かれる前に、天安門広場に車が突っ込む事件が起きましたし、2022年には第20回共産党大会直前に歩道橋で政権を批判する横断幕が出たことがありました。つまり、抗議活動が頻発しています。
そして何より、北京上空という極めて厳しい制限がかけられた場所に突っ込んだという点が怪しいのです。普通の民間機はすべて回り道をしますし、ドローンですら飛ばせないほど警備が厳重な場所です。とくに式典の前1ヵ月は、大量の警備員が市内に配置され、交通事故すら起こしてはいけないような雰囲気が漂います。そういう状況で、わざわざビルに突っ込むのは“反習近平”というメッセージがあるように思えてなりません」(近藤氏)
実際、中国国内の景気減速により、“不満の種”はそこらじゅうに転がっているという。
「失業者はかなり増えている印象ですね。7月は1270万人もの学生が大学・大学院を卒業しますが、就職難にあえいでいる学生は多い。それから不動産の下落も深刻です。底なし沼のように価格が落ちていて、全国平均の不動産価格はこの5年で5分の1まで下落しました。市民の中で政府への不満が溜まっているのは間違いないですよ」(近藤氏)
一方、テロ説に対して否定的なのは、中国事情に詳しいルポライターの安田峰俊氏だ。
「本件に限らず、中国は大きな事件が起きた際、積極的に情報公開をしません。その反動で、海外の反体制派の中国人やメディアを中心に、様々なデマが流れるのはいつものことです。現時点で、意図的にテロをおこなったという言説を裏付けるような確実な情報が何も出ておらず、推測の域を出ません。
デマは常に、デマを語る人たちの“願望”から生まれます。今回の一件も反体制派の中国人が抱いた“願望”が形になっているのでしょう。
ただ、あえて挙げるなら、近年の中国では、多重債務などによって首が回らなくなった人が、車で小学校に突っ込んだり繁華街で刃物を振り回したりするなど、自暴自棄を起こす事件が度々話題になっていること。これらから連想し、今回の一件も騒がれているのだと思います」
とはいえ、パイロット以外にも多くの人を巻き込む可能性があった事件であるのは間違いない。単なる事故だったとしても、徹底的な原因究明をして再発を防ぐのが第一の気もするがーー。
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