
トランプ大統領(写真・共同通信)
イランがトランプ大統領の暗殺を計画ーー。7月10日、米CNNテレビが報じた内容が世界に衝撃を与えている。
「CNNの報道は、イランによるトランプ暗殺計画の情報を、イスラエルが米政府に伝えたというものです。それに反応するように、トランプ大統領はNATOの首脳会議出席のあと、トルコからの出国時に、新型の大統領専用機ではなく、ミサイル迎撃システムなどがより充実している旧型機に急遽乗り換えて帰国しました。安全上の懸念からとみられています。
トランプ大統領は自身のSNSで『自分が暗殺された場合、未遂であってもイラン全土を完全に壊滅させる』という大統領令を米軍に下したことを明らかにしています。また、『すでに、1000発のミサイルがイランに照準を合わせており、暗殺が実行された直後には数千発が続く』と警告しています」(外信部記者)
それに対して、イラン側も激しく反発。最高指導者のモジダバ師は米イスラエルにより殺害されたハメネイ師の葬儀終了に際して「復讐を誓う」と表明。7月11日には、イランの主要紙「ハムシャハリ」が、報復対象として13人の「報復リスト」をウェブサイトに掲載した。
「リストには囚人服を着たトランプ大統領とネタニヤフ首相のほか、ルビオ米国務長官、ヘグセス米国防長官や、スターマー英首相、マクロン仏大統領、メローニ伊首相、メルツ独首相の名も含まれていました。モジタバ師の『名簿に名前が載ったこの犯罪者は、安らかな死を迎えたいという願いを墓場まで持ち込むことになるだろう』という声明もついていました」(同前)
6月に結ばれた停戦覚書は崩壊し、米軍による連日の空爆やイランによる湾岸諸国の米軍基地への報復攻撃が続いている。止まらない暴力の連鎖のなかで、「トランプ暗殺」はもはや決して荒唐無稽な話ではなくなりつつあるようだ。
7月6日時点で、トランプ暗殺計画を「未確認情報」としていちはやく掴んでいたのが軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏だ。黒井氏は自身のXにこう書いている。
《イランのコッズ部隊が、メキシコ麻薬カルテルや在外イラン人の一部を使って米国内への侵入工作を強化。専門班は「ムフタール部隊」と名付けられたとのこと》
黒井氏が同投稿の真意を解説する。
「『侵入工作』の “目玉” はトランプ暗殺です。情報の出所はイスラエルのテレビ局『チャンネル14』。同局はイスラエルの情報機関『モサド』と関係が深いので、おそらく『モサド』のリークでしょう。それが、その後のCNNなどの報道で裏づけられた形です」(以下「」内は黒井氏)
コッズ部隊はイスラム革命防衛隊の一組織で、海外で秘密活動・特殊工作をやる専門機関であり、テロや暗殺を実行する組織でもある。
「トランプ暗殺だけでなく、米軍の拠点をテロの標的にしたり、軍幹部の暗殺を想定したりすることが考えられます。実際、革命防衛隊の幹部は、最近も『米軍人には世界どこにも安全な場所はない』と明言しています。テロを実行する準備を進めるために、当然動いているはずです。
今回注目されているのは、メキシコの麻薬カルテルのルートです。カルテルを買収するなり、交渉するなり手を組んで、イランの工作に使おうということでしょう。実際、イランは1980年代や1990年代に世界中で暗躍し、テロ事件などを起こしましたが、自ら爆弾テロや暗殺を手がけるのではなく、ヒズボラの工作班など外国人グループに実行させるのが特徴です。今回も、具体的な作戦を立案する場合はコッズ部隊は指示だけを出し、準備にはメキシコ組織のルートが使われ、実行はカネで雇ったチンピラとなる可能性が高いでしょう。要するに日本の “闇バイト” のイメージでしょうか」
トランプ大統領を標的とした暗殺未遂事件はこれまでに何度か起きている。2024年7月、ペンシルベニア州での選挙期間中、演説をしていたトランプ氏がライフルで銃撃され、耳を負傷した事件はあまりにも有名だが、イランの関与をうかがわせる暗殺未遂事件もいくつか摘発されている。
「1つは2024年7月、パキスタン国籍の容疑者が米国内で政治家や政府高官の暗殺を企てた疑いで逮捕されています。FBIの捜査官が『自分は殺し屋だ』と偽って、おとり捜査で近づいていったんです。調べでは、容疑者はイラン革命防衛隊と密接な関係があり、5000ドルの資金提供を受けていたことがわかっています。この件では2026年3月に有罪判決が出ています」
そして、もう1件の暗殺未遂事件にもイランの革命防衛隊が関与していた。
「イランの命令でトランプ大統領の暗殺を計画したとして、2024年11月に米司法省は主犯のイラン在住アフガニスタン人とその協力者だった米国人2人を訴追しました。主犯はイラン在住ですが、米国人2人は逮捕されています。今年3月、米へグセス国防長官は、この計画を指令した革命防衛隊幹部をドローンで殺害したと発表しました。
いずれの暗殺未遂事件も、元をたどれば、2020年1月、コッズ部隊のソレイマニ司令官が米軍のドローンで暗殺されたことへの “復讐” から始まっているんです。しかし、これまでの暗殺未遂事件で捕まったのはいずれも “小物” でした。イランは米国内で自力で本格的なテロをする準備が出来ていなかったわけです。そこで今度は米国内に浸透している麻薬組織に頼ろうとした。イランはより本格的な暗殺を実行するための準備を進めているとみて間違いないでしょう」
「私はイランの暗殺リストのトップ」ーー。8日の記者会見でこう述べたトランプ大統領。もしも作戦が成功した暁に待っているのは、平和な世界か、新たな復讐か。
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