2022年、安倍晋三元首相が荼毘に付された桐ヶ谷斎場も、東京博善の経営だ(写真・保坂駱駝)
《人の死をカネのなる木にしてはならない》
7月5日付の「産経新聞」朝刊社説「主張」は、東京23区内で6カ所の火葬場を運営する「東京博善」を傘下に持つ広済堂ホールディングス(HD)を、そう厳しく批判した。
「産経新聞」はこれまでも、東京博善が比較的安価な「区民葬」の枠組みから2026年3月末で離脱したことや、火葬料金を5万9000円から8万7000円へと約50%引き上げたことなどを繰り返し報道してきた。さらに現在、米投資ファンドKKRや東京都による買収観測が浮上しており、今回の社説では《東京23区で約70%のシェアを占める火葬会社が、マネーゲームの対象になっている》ことを問題視したのだ。
「東京博善」への逆風が吹くなか、取材する記者たちの前に立ちはだかる人物がいる。広済堂HDの広報責任者を務める比護義則氏だ。比護氏が注目される理由は、批判の急先鋒である「産経新聞」で、かつて政治部や社会部を渡り歩いてきた名物記者だったからだ。
「比護さんは、『産経新聞』在籍時には『嫌われ記者?比護義則が行く』と題したコラムを担当するなど鋭く切り込む取材で知られ、官僚や政治家にとっては“天敵”でした。2008年には、中央省庁の官僚らがタクシー運転手からビールやおつまみなどの接待を日常的に受けていた『居酒屋タクシー』問題をスクープし、新聞協会賞の候補にもなっています」(全国紙記者)
権力や企業を追及する側にいた記者が、今は“古巣”に追及される企業を守る立場に回っているのである。比護氏は2020年に産経新聞社を退社し、日本風力発電協会で広報部長を務めたあと、2025年冬に広済堂HDに迎えられた。
「比護さんは、日本風力発電協会での実績が買われ、広済堂に一本釣りされたのでは、と記者のあいだで話題になっています。2023年に加盟企業『日本風力開発』の元社長が贈賄罪で東京地検特捜部に起訴された際、比護さんは“火消し役”としてマスコミ対応に奔走し、多くのメディアに登場していましたからね」(同前)
そして2025年12月、東京博善社長の野口竜馬氏らによる会見が開かれた。中国・上海出身の羅怡文(ら・いぶん)会長が2019年に広済堂の経営権を握って以降、火葬料金の相次ぐ値上げや、中国資本による公共インフラ支配への懸念などを背景に、各メディアの追及が強まっていたためだ。
その会見で、現場を取り仕切ったのが比護氏だった。
「比護さんは、批判を続けていた産経新聞記者の真横に立ち続けていました。記者の質問や記事の作り方を知り尽くしているだけに、独特の緊張感がありました」(会見に出席した記者)
会見後も、都庁記者クラブへ足しげく通い、各社に経営状況を説明してまわっている比護氏の姿がたびたび目撃されている。
「比護さんは毎日のように都庁記者クラブのマスコミ各社を訪問し、一方的な記事が書かれないよう丁寧に経営の現状を説明していました。『上場企業として監査がおこなわれ、適法に経済活動をしている』と主張されると、メディア側は攻撃しづらい。戦後、都や23区は他県で当たり前となっている公営の斎場建設を拡大することなく、大部分の運営を民間業者にまかせてきた。それが、羅氏に付け入る隙を作ってしまったのです。いくら元記者の広報が敏腕でも、我々マスコミは厳しい目で同社を監視しなければなりません」(同前)
本誌は、広済堂HDに比護氏を採用した経緯などについて問い合わせたところ、同社広報担当者は「いわゆる“一本釣り”ではなく、公募したなかで経歴などを考慮し、採用をおこないました。(東京博善のメディア対応のために採用したのではなく)採用理由は、グループ全体の広報体制の強化のためです」と回答した。
もっとも、冒頭の社説のように、「産経新聞」の広済堂をめぐる批判は収まっていない。東京博善をめぐる議論が続く限り、名物記者と“古巣”の攻防も繰り広げられそうだ。
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