
グレーのブランケットを脇においた高市早苗首相
「高市首相への不満、文句、批判が解禁されつつあります。これが、支持率低下による変化のいちばん大きなところですね」
そう語るのは、元朝日新聞政治部デスクの鮫島浩氏だ。
圧倒的な支持率を背景に、国旗損壊罪や皇室典範改正など強気の国会運営を主導してきた高市早苗首相。だが、その反動は大きく、7月におこなわれた新聞各紙の内閣支持率は一斉に下落をし始めた。これを受けてか、高市首相はあわてたように、選挙時の公約である消費税減税を訴え出したが、さらに波紋を呼びそうでーーー。
「消費税率を2年間、時限的に1%へ引き下げるというものですが、これをきっかけに、反・高市包囲網が生まれつつあります。口火を切ったのは、党税制調査会のインナー(非公式幹部会合)を突然、辞任した小渕優子元自民党選対委員長です。
小渕氏は父親の小渕恵三元首相由来の、典型的な財務族ですからね。これがアンチ高市派には『真っ先に反旗を翻した』と非常に評判がよかった。これで一斉に、高市首相の悪口を言えるぞという空気が財務族に強まり、批判が解禁されました」(鮫島氏)
小渕氏の反旗をきっかけに、自民党内では財務族が勢いづいた。
「宮沢洋一前税制調査会長や中谷元前防衛相ら9人が、自民党総務会を欠席していますからね。さらに、小渕氏と関係が深い古川禎久(よしひさ)元法相は『消費税減税は党の公約ではない』と激しく反発し、小野寺五典税調会長に反対の意見書を提出しました。また、元経済産業相の齋藤健衆院議員など、財務省の影響力が強い議員らも水面下で同調していると聞いています」(同前)
高市首相に牙をむく、もうひとつの勢力が「石破一派」である。
「石破茂前首相をはじめ、岩屋毅前外相、村上誠一郎前総務相、中谷前防衛相らは、高市政権の発足当初から批判的な姿勢を示してきました。減税議論が紛糾するなかで批判のトーンを一層強めています」(同前)
そして、もっとも不気味な存在として政権を威嚇するのが、第3の勢力である、麻生太郎副総裁率いる「麻生一派」だ。
「麻生氏本人は消費税減税について『俺は反対だが総理が決めるのなら反対はしない』と距離を置きつつ、自身の側近である河野太郎元デジタル相に、明確な減税反対を表明させています。これは麻生派としての代弁であり、次の内閣改造で高市首相が好き勝手にやれば引きずり下ろすぞという強烈な警告でしょうね。
皇室典範改正は、彼らにとっての悲願。法案が通過するまではおとなしくしていましたが、いまは黙っている理由がありません」(同前)
当然、消費減税には立憲民主党や中道改革連合も「財政悪化と円安加速を招く」と高市首相を糾弾している。国民民主党の玉木雄一郎代表も、かつての減税主張から一転して、麻生氏に歩調を合わせる形で反対姿勢に転じた。党内外から包囲網が狭まるものの、高市首相にも勝算はあるという。
「党内3大勢力が結束すればあっという間に“高市アウト”ですが、麻生氏と石破氏は不仲であり、麻生派と旧宏池会系の財務族も距離があります。3大勢力が簡単に連携できる状態にないことが、高市首相にとって最大の強みとなっています」(同前)
しかし、政策そのものへの批判は高まる一方だ。多摩大学客員教授の真壁昭夫氏は、このそもそも減税策の有効性を根本から疑問視している。
「消費税率は下げても1年後にはその効果に慣れてしまうため、消費を長期間、盛り上げるのは不可能です。しかも現在の物価高は、原材料コストの上昇によるコストプッシュ型インフレであり、税率を下げても販売価格は安くなりません。経済の基本を理解していれば、10兆円もの巨額の資金を投じて、このような効果が不透明な政策は打ち出さないはずです」
真壁氏は、財源問題についても強い懸念を表明する。政府が検討する外国為替資金特別会計(外為特会)の活用は、市場にさらなる円安圧力を加え、輸入物価のさらなる高騰を招く悪循環を生むと指摘する。
「最大の問題は消費税の持つ逆累進性です。減税効果は富裕層ほど大きくなり、貧困層への支援としては非常に効率が悪い。真に困窮している生活者や年金生活者を救うなら、給付つき税額控除やピンポイントのセーフティネットを構築すべきです。
さらにいえば、2年後に消費税を“元に戻す”のも難しいでしょう。日本経済の歴史上、一気に7%も税率を上げた実績はなく、景気動向を考えれば現実的ではありません」
消費税減税が何の効果もなければ、“高市包囲網”はますます狭まりそうだ。
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