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【トイプードル警察犬、現場を駈ける】犬種不問になって “シェパード一強” に変化が…指導手に聞いた育成事情「人が育たなきゃ、犬も育ちません!」

社会・政治 記事投稿日:2026.09.13 06:00 最終更新日:2026.09.13 06:00

【トイプードル警察犬、現場を駈ける】犬種不問になって “シェパード一強” に変化が…指導手に聞いた育成事情「人が育たなきゃ、犬も育ちません!」

栃木県の警察犬、トイプードルのケン(中央左)と、ジャック・ラッセル・テリアカノン(同右、写真・保坂駱駝)

 

 地面にぴったり鼻をつけ、必死ににおいをたどる。小さな体を大きく揺さぶりながら前へ進むのは、トイプードルのケン(オス2歳)。その後ろを、ジャック・ラッセル・テリアのカノン(オス8歳)が見守るようについて行く。じゃれ合っているのではない。人の残したわずかなにおいを追いかける、足跡追及訓練の最中なのだ。

 

 かつて人気を博したドラマ『刑事犬カール』(TBS系)がそうだったように、警察犬といえばジャーマン・シェパードを思い浮かべる人も多いだろう。そのほかラブラドール・レトリバーやドーベルマン、ボクサーなどの「指定7犬種」のなかから、長年選ばれてきた。

 

 だがいま、小型犬がその一角に食い込んでいる。栃木県警は昨年、嘱託警察犬審査での犬種指定を撤廃し、犬種を問わず能力主義で選ぶ方式に変更。そして、「7犬種」以外で初めて採用されたのが、ケンとカノンである。

 

 じつは、全国の警察犬の9割近くが、民間で飼育・訓練され、警察の要請に応じて出動する「嘱託犬」だ。栃木県警では現在、38頭の警察犬はすべて嘱託でまかなっている。警察が直接飼育・訓練する「直轄犬」は、飼育施設や専従の指導手が必要になり、財政・人事面の負担が大きい。そこで民間の訓練士や飼い主に訓練を委ね、必要時に出動してもらう体制を取ってきたのだ。

 

 長年、同地で警察犬の育成に携わってきた栃木県警察犬訓練所を訪ねた。創業者は、半世紀以上にわたって警察犬を見てきた池上行雄さん。現在は、息子の裕二さんが所長を務める。行雄さんが話す。

 

「うちで扱ってきた警察犬は、全体の9割以上がジャーマン・シェパードです。歴史的にもノウハウの蓄積が違いますからね。残り1割弱に、ラブラドールや今回のような小型犬など、多様な犬種が入ってきます」

 

 では、小型犬が警察犬として力を発揮するには何が必要なのか。裕二さんは「何よりも性質がものをいう」と語る。

 

「どれほど体格に恵まれたシェパードでも、においを追う執着心が弱ければ現場では使えません。逆に小柄であっても好奇心旺盛で、一度掴んだにおいを離さない没頭癖や集中力があれば、現場で大きな力になります」

 

 実際、カノンは2026年2月、栃木市内で道に迷って行方不明となっていた80代の男性を捜索。霧雨が降る厳しいコンディションのなか、約3時間にわたって追跡し、男性を発見・保護した。飼い主で訓練士の飯田早希さんは、カノンとの出会いを振り返る。

 

「出会ったころから、鼻を使う遊びをやらせたら絶対にあきらめないコだったんです。『これだ』と思って訓練を重ねていったら、追跡能力が一気に開花しました」

 

 栃木県警警部の山崎直行鑑識指導官は、小型犬の強みをこう語る。

 

「近年、住宅街などで高齢者が道に迷うなどして行方不明になるケースが増え、捜索要請が急増しています。一刻を争うなか、大型犬では入れない草むらの隙間や、倒壊リスクのある狭小地に入り込める小型犬のフットワークは大きな強みになります。捜索の選択肢が増えることは、発見率の向上につながります」

 

 だがもちろん、犯人の制圧など体格が求められる現場では中・大型犬が欠かせない。犬種ごとの特性を踏まえ、任務に応じて使い分けることが重要なのだ。

 

■直轄犬を育てる福岡県では、“レア犬” も続々と!

 

 警察犬の能力を引き出すには、犬を育てる人間の技術も欠かせない。その実態を浮き彫りにするのが、福岡県警の事例だ。1974年に犬1頭、指導手1人でスタートした同県警の警察犬制度は、2026年度現在、直接飼育・訓練する直轄犬が6頭、嘱託犬が10頭という体制を敷く。全国でも数少ない直轄犬を抱える県警のひとつだ。

 

「1頭につき指導手が一人ついて、訓練を集中的にやります。力ずくじゃダメで、犬自身に『何かをするのが楽しい!』と思ってもらうのが大事です」(磯田保警部補)

 

「人間の子育てに近いものがありますね。ただ、人はやがて話せるようになるけれど、犬は動きや吠え声でしか意図を表現できない。だからこそ難しいんですよ」(栗原慎二警部補)

 

 そして、犬を育てるには、指導手自身も経験を積まなければならない。

 

「高いスキルを持った人材を簡単に異動させたくなくてね。私も何度か、人事に『頼むからこの担当者を残してくれ』ってお願いしたくらいです。人が育たなきゃ、犬も育ちませんから」(江頭都信警視)

 

 福岡にも、「7犬種」以外のユニークな嘱託犬がいる。福岡市の専門学校「福岡ビジョナリーアーツ」で訓練を受けるオーストラリアン・シェパードのノエル(メス6歳)だ。

 

 九州で、警察犬として活躍する同犬種はノエルただ一頭。黒と白の毛並みやシルエットから、街を歩けばほぼ100%、「ボーダー・コリーですか?」と声をかけられるという。だが、俊敏すぎて初心者には扱いが難しいボーダー・コリーに比べ、ノエルはおっとりとした性格で指導しやすく、それでいて高いスキルを備えている。指導する同校講師の福永美澄希さんが語る。

 

「ノエルは、学内に約80頭いる犬のなかでも能力は群を抜いていて、福岡国際マラソンの事前警備などでも警備犬としてしっかり任務を果たしてくれました。いまは、国際災害救助犬試験に向けたノエルの訓練を、学生の一人にまかせています。修業時代、親方に『犬は鏡だ』と教わりました。自分がかけた時間と愛情がそのまま映るんです」

 

■元戦車兵の訓練士が才能を見出した「純白のシェパード」

 

 福岡には、全国でもわずか2頭という珍しい犬種の警察犬もいる。純白の被毛が目を引くホワイト・スイス・シェパードのイブ(オス6歳)だ。育てるのは加山洋平さん。その訓練を支えるのが、陸上自衛隊で戦車に乗っていたという異色の経歴を持つ大内田武士さんだ。

 

 加山さんが飼っていたイブの警察犬としての才能を、大内田さんが見出したことがきっかけで、加山さん自身も警察犬指導手の道を志した。訓練では、軍用犬にも起用されるベルジアン・シェパード・ドッグ・マリノアのサラ(メス8歳)とともに汗を流す。イブにとって、経験豊かな “姉貴分” だ。

 

「ベルジアンは高い運動能力と作業意欲を持っています。犬種によって、それぞれ得意とする仕事は違う。現場のニーズに合わせ、その強みを生かすことが大切なんです」(大内田さん)

 

「イブの白い被毛は一般の人や子供たちに怖がられにくく、すんなり協力してもらえるのが強みです。出動の機会がいつ来ても100%の力が出せるよう、準備を怠らないだけです」(加山さん)

 

 犬種の幅が広がっても、最後に問われるのは、1頭に眠る力と、それを見出す人の目なのだ。

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出典元: 週刊FLASH 2026年9月22日号

著者: 『FLASH』編集部

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