社会・政治社会・政治

【ルポ】「核のゴミ」処分場「調査受け入れで20億円」に町が揺れる…市長は「未来の世代に議論の余地を」前向きに検討

社会・政治 記事投稿日:2026.09.26 06:00 最終更新日:2026.09.26 06:00

【ルポ】「核のゴミ」処分場「調査受け入れで20億円」に町が揺れる…市長は「未来の世代に議論の余地を」前向きに検討

茨城県常陸大宮市の市議会本会議で発言する鈴木定幸市長(写真・共同通信)

 

「まったく寝耳に水、ニュースで初めて知ってたまげたよ、なんでここなんだって。理由も説明もないままどんどん話を進めている市長には疑問しかない。これで納得しろって言われてもできるもんじゃないよ」

 

「受け入れに前のめりになってる市長には我慢できない。住民の声も聞かず知らないうちに決めてしまう。まるで無視されてるみたいで……」

 

 筆者が聞いたこうした市民の声は、茨城県常陸大宮市に突如持ち上がった高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のゴミ」の最終処分場の設置をめぐって、不安と困惑で大きく揺れている住民心理を表わすものだ。

 

 経済産業省は8月31日、常陸大宮市に対し、処分場選定に関する「文献調査」受け入れ要請をおこなった。文献調査とは、現地調査はおこなわず、地質図や学術論文などをもとに、火山活動や活断層がないかなどを、机上で確認する作業のことだ。

 

 核のゴミは、人体にも環境にも影響がない状態になるまで数万年というとてつもない期間を要する。このような危険なものを保管する施設だけに、文献調査でさえ、受け入れた自治体は北海道寿都町、神恵内村、佐賀県玄海町、東京都小笠原村の4自治体にとどまっている。

 

 9月18日、住民からの懸念の声が出ていることを受け、鈴木定幸・常陸大宮市長は文献調査受け入れの判断を保留した。しかし、撤回ではなく、「風評被害の懸念、市民への説明機会などについて、国の考え方を確認し、あらためて判断する」と受け入れの余地を残した。

 

 今後、常陸大宮市が文献調査を受け入れれば全国で5例め、しかも「市」では初のケースとなる。では、いったいなぜ同市に白羽の矢が立ったのか。

 

「8月31日、本市に対し、経産省から文献調査受け入れ要請があったんです。(自治体からの応募でなく)国側の要請を受けたのは(小笠原村の)南鳥島に次いで2例めです。本市は科学的特性マップで適正地域であることや、市の南東部に未利用地が多いことなどを理由に、調査を要請されたのです」(常陸大宮市総務課)

 

 しかし、実際は違う。住民側から名乗りを上げたものだ。

 

「2026年8月初めごろ、市内有志が経産省に要請したのが始まりです。これを受けて8月21日、国側の担当者が市を訪問し、31日に市長と会って正式に要請したんです。しかし、これは市側の説明であり、実際はすでに2025年秋ごろから話は進んでいました」(常陸大宮市議)

 

 従って、文献調査受け入れ話は突然降ってわいたものではない。すでに「2025年10月ごろから12月にかけて3回ほど、30代、40代の市内の有志が国側と会って勉強会をおこなっていたんです」(別の市議)というから、水面下では着々と受け入れ準備が始まっていたのだろう。しかも、勉強会には市長も加わっていた。

 

「勉強会が開かれたのは事実です。文献調査とはどのようなことかなど、受け入れにともなった勉強会です」(総務課)

 

 処分場選定には3段階のステップを踏む。「文献調査」はその第1段階。 前述のとおり、ここで学術論文や地質資料をもとに机上で調査する。問題がなければ第2段階の「概要調査」に進む。ここでは実際に岩盤や活断層などを調査する。問題がなければ、さらに第3段階の「精密調査」へ進む。

 

「文献調査」はおよそ2年、「概要調査」はおよそ4年、「精密調査」はおよそ14年かかるとされ、20年かけて、最終処分場の設置が決まることになる。

 

 文献調査を受け入れると最高20億円、概要調査を受け入れると最高70億円、それぞれ自治体に交付される。ただし、現在、第2段階に進んだ自治体はなく、すべて第1段階にとどまっている。また、「精密調査」受け入れ時の金額はまだ決まっていない。

 

 鈴木市長は、文献調査受け入れについて、「メリットは、ドライな表現だが、お金」と報道陣に語り、積極姿勢を見せていた。市庁舎を訪れていた男性は、鈴木市長のこの発言に同意し、こう語る。

 

「実際、そのとおりだし、市長の言葉を私は信頼している。いずれどこかが引き受けなければならないし、放ってはおけない。ただ事故や不安の解消に努めてもらいたい。それには住民に説明し、理解してもらうことだ」

 

 この男性と同様に、文献調査受け入れに賛成する住民も少なくない。同市総務課の担当者は、こう説明する。

 

「文献調査は2年かけておこなわれるので、住民説明会はこの期間中に実施します。また、文献調査受け入れの諾否は市長の専権事項なので、議会の議決を必要とするものではありません」

 

 常陸大宮市は人口約3万5000人。人口減少も著しい。市域の6割を山林が占め、さしたる産業も観光資源もとぼしい。このままゆけば、市の存続もおぼつかないと危機感を抱く住民もいる。

 

 市長は受け入れ可否の判断を保留したが、早くも事実と異なる情報が広がり始めたとの懸念も寄せられている。ある市議は、

 

「『核のゴミ処分場ができるんだって?』と、すでに建設が決まったかのように誤解した電話がありました。すでに風評被害は始まってるんです」

 

 と警戒を強める。たしかに、20億円の交付金は魅力的だろう。だが、それで常陸大宮市の起死回生が図れるかどうかはわからない。

 

 市長は、こうも語っている。

 

「常陸大宮市に誘致されたとしても、そのころには、おそらく私はこの世に存在しないと思う。私は、きっかけをつくり、未来の世代に議論の余地を残していきたい」

 

 住民の不安は日増しに高まるが、一方で、なにもしなければ市の存続さえ危ぶまれるのも確かだ。市の将来をどう考えるのか、文献調査の受け入れをめぐり、市民の間で議論が始まっている。

 

取材/文・岡村 青

12

出典元: SmartFLASH

著者: 『FLASH』編集部

社会・政治一覧をもっと見る

今、あなたにおすすめの記事

関連キーワードの記事を探す