10月2日、千葉県匝瑳(そうさ)市の海岸に打ち上げられていたクジラ(写真・梅基展央)
「大型のクジラ類が1頭、打ち上げられることは、それほど珍しくはありません。しかし、短期間に2頭が近い場所に打ち上げられるというのは、かなり珍しいという印象を持っています」
そう語るのは、鯨類学が専門である東京海洋大学の中村玄准教授だ。
9月19日、千葉県匝瑳(そうさ)市の海岸に、約17mのナガスクジラと見られる個体が打ち上げられているのが発見された。発見時にはすでに死んでいたとみられ、30日正午ごろまでには学術調査をおこなう国立科学博物館のスタッフや、県から委託された建設会社などにより、解体・埋却された。2頭めの漂着が発見されたのは、その直後だった。
「30日の午後、クジラが打ち上げられていると、近くの住民から市に通報があり、発覚しました。発見された海岸は、1頭めが打ち上げられた地点から、南に約1kmほど行った浅瀬で、動いている様子が確認され、まだ生きています。10月2日の時点でも、目を閉じたり開いたりするなど、生きていることが確認できます」(地元記者)
1頭めと同様に、10mは超えるだろう巨体だ。群れなどのつながりもありそうに見えるが、前出の中村准教授は否定する。
「基本的には、ナガスクジラなどの大型のヒゲクジラは単独で行動することが多く、あまり群れを作りません。親子や、餌場で一時的に一緒になるケースを除けば、つねに一緒に動いていることはないため、今回、相次いで打ち上げられたのは偶然だと考えられます」
さらに一部SNSでは、10月1日の夜に千葉県北東部を震源地とするM5.1の地震が発生したことや、九十九里沖で二酸化炭素の貯留事業のために試掘がおこなわれていることとの関連について、ささやかれる事態となっている。
「関係ない、と否定する要素もありませんが、関係がある、という証拠も出せないと思います。基本的には、そうした事象と今回の漂着に関係があるとは考えにくいですね」(中村准教授)
現場では、見物に訪れた人から「かわいそう」などの声も漏れている。中村准教授が、クジラの状態について懸念する。
「ナガスクジラ科とみられる個体ですが、非常にやせていると感じます。目の上もかなりくぼんでおり、ここまでやせこけている個体はあまり見たことがありません。ひょっとしたら、何か病気の可能性などもあるかもしれません」
衰弱しつつあるが、海へ戻すことはできないのだろうか。
「20m近い大型のクジラとなると、体重は50tから60tに及びます。それを海へ引き戻すのは危険がともないますし、暴れる可能性もあります。かりに戻せたとしても、いままでの事例からすると、また別の場所に打ち上げられ、死んでしまうことが多いのです」(中村准教授)
さらに中村准教授は、本来、外洋に生息しているはずのクジラが岸に寄ってくる時点で、すでに弱っており、何らかの問題を抱えている可能性を指摘する。
「(9月21日ごろには台風25号が千葉県を直撃したが、それが)直接的な要因ではないにせよ、体調が悪くてフラフラしている個体が、台風などによる大きな波や強い風に抗いきれず、岸に寄ってきてしまった可能性はあります。波打ち際で体が海上から出ていますから、体重による圧迫を受け、呼吸もかなりしづらいはずです。自然の摂理として、死んでしまう個体が出ることは避けられません」
クジラの巨体は、自然界の厳しさを我々に伝えている。
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