簗和生農水相(写真・長谷川 新)
衆院選で自身を支援しなかった地元自治体の道路予算を「大幅にカットした」——。予算配分をめぐる簗(やな)和生農林水産相の“圧力”発言が問題となっている。渦中の簗農水相は10月7日午前、農水省内で開いた4回めの会見で、あらためて辞任を否定し“総スカン”状態となっている。
「簗氏は2月の衆院選で、保守分裂となった栃木3区から出馬しました。小選挙区では対立候補に敗れましたが、比例復活で当選を果たしています。その後、5月に栃木3区内で開かれた自民党支部の会合で、首長が対立候補を支援した栃木県の那須烏山市と那珂川町について『道路予算は大幅にカットした』などと発言していたことが、『週刊文春電子版』と『デイリー新潮』で報じられました。
簗氏は当初『コメントは控える』と繰り返していましたが、10月5日にようやく発言を撤回し、謝罪しました。簗氏は予算削減を『働きかけはしていない』と圧力を否定していますが、疑惑は晴れたとはいえず、野党をはじめ自民党内からも『更迭すべきだ』という声があがっています。簗氏は辞任を否定しています」(政治担当記者)
高市早苗首相の任命責任も、当然ながら問われている。だが、高市首相は8日の参院本会議で簗農水相の発言を「不適切だ」としながらも「職責をまっとうしてほしい」と、辞任させる考えはないことをあらためて示した。
政治ジャーナリストの鮫島浩氏が、高市首相が簗農水相を「切らない」理由についてこう分析する。
「まず、簗氏の人事が“一本釣り”人事であるためです。 簗氏は旧安倍派の推薦や順当な順番を経たわけではなく、高市首相が応援に入った選挙で、小選挙区では負けて比例で復活しています。にもかかわらず、首相が個人的なお気に入りとして、異例の抜擢をされたのです。
もともと、党内には簗氏の農水相という人事に反発がありました。党内の反発を押し切って起用した手前、更迭すれば高市首相自身へのダメージとなり、党内から『それ見たことか』と一気に追いつめられるため、切るに切れない状況なのです」
簗農水相の発言が、党全体に影響することを逆手に取る狙いも背景にあるという。
「予算を盾にする手法は、自民党の“王道”。誰でもやっているのは常識です。たとえば、二階俊博元幹事長は2019年6月、徳島市での会合で『選挙を一生懸命がんばったところに予算をつける。休んでいるところは予算を休ませてもらう』と発言していますが、今回の簗氏とまったく同じ趣旨の内容です。
党内には自分に“飛び火”しないように、簗氏を早く切って事態を収拾したい空気がありますが、高市首相には『本気で追及すればほかの議員にも問題が広がる』という“逆恫喝”的な心理があり、党内の圧力に簡単には屈しない構えを見せています」(鮫島氏)
さらに、高市首相の“強気”は、スキャンダルを乗り切った過去の体験があるというのだ。
「高市体制となってからの1年間、閣僚や首相本人の不祥事があっても誰も辞めさせず、耐え忍べば世論の風向きが変わる、という成功体験を首相は持っています。そのため、今回も『強気で押し通せばなんとかなる』と、高をくくっている側面があります。
高市首相が簗氏を切るとすれば、今回の問題によって内閣支持率が下がってきたときです。しかし、野党が弱いこともあって支持率は上向きです。いざとなれば『解散する』とでも言えば、野党も自民党内も震え上がるでしょう」(同前)
いずれ、ほとぼりが冷める——。高市首相がそう考えているとしたら、国民は心底、なめられているのではないか。
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