
10月14日、予算委員会に出席した高市早苗首相(写真・長谷川 新)
10月14日、「道路予算カット」発言などで野党の追及を受けていた簗和生農相が、高市早苗首相に辞表を提出し、事実上更迭された。15日には後任として武部新氏が新農相に就任している。
昨年の内閣発足以降、不祥事による閣僚交代は初となる。このドタバタ劇の裏側について、元朝日新聞政治部デスクで政治ジャーナリストの鮫島浩氏はこう分析する(以下、「」はすべて鮫島氏)。
「当初、高市首相は追及に耐えれば流れが変わると踏んで、強気で乗り切れると思っていました。しかし、世論の批判が強まったことに加え、簗氏が選挙区で落選した比例復活組で、裏金議員でもあったことから、自民党内にも不満が渦巻きました。旧安倍派の親分格である萩生田光一氏らもかなり批判していました。
高市首相は自分の非を認めない性格で、『道路予算カット』の発言は一度許容してしまったため、それだけでは切れなかった。結果として、無料シャトルバスの件を後づけの理由にして、一転、更迭へと舵を切りました。世論対策という意味では、更迭のタイミングは遅すぎたといえます」
一方で、野党の問責決議案などを念頭に置いた国会対策としては、「早すぎた」と指摘する。
「いざ問責決議案を出すとなったとき、野党が本当に結束できるかを見極め、ギリギリまで引っ張って野党の分断工作をおこなうという手もありました。しかし、高市首相が抜擢した村井英樹国対委員長が経験不足なうえ首相の言いなりで、入念な戦略もなく、首相が心変わりした瞬間に切ってしまった。非常に稚拙な国会対策でした。
さらに、早く切ってしまったことで、次のターゲットである日本維新の会の中司宏・内閣府特命担当大臣に火の粉が飛びそうな気配です」
中司氏は、大阪府枚方市長時代、清掃工場の建設をめぐり官製談合をおこなった疑いで逮捕され、2009年に有罪判決を受けている。本人はいまも冤罪を主張している。
「維新にとって、連立政権で初入閣するというの大きなトピックスです。それなのに、なぜ中司氏をわざわざ選んだのかという疑問が出ています。中司氏の問題はインパクトが大きく、バラバラだった野党が『アンチ維新』で結束する可能性が十分あります。簗氏をぎりぎりまで引っ張ったほうが、むしろ中司氏への波及を遅らせることができたはずです」
更迭で、一時的に事態は収拾したかに見えるが、党内の亀裂は深まるばかりだ。
「後任の武部氏は50代で初入閣、安倍チルドレンという意味で簗氏とかぶります。麻生太郎氏ら従来の幹部層ではなく、次世代を取り上げることで、世代交代の歯車を今後も動かしていくという強いメッセージを込めているのでしょう。麻生氏と高市氏の緊張関係は今後も続くはずです。
高市氏にとって、一本釣り人事で自分の親衛隊を作ろうとして、いきなりコケた形です。致命傷にはならないまでも、ワンマンで戦略性のない高市氏の意思決定に不安を残す結果となりました」
次々と吹き出る火種。政権の先行きは険しいものになりそうだ。
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