
10月16日、「J-Beauty(ビューティー)産業振興議連」の設立総会に出席した林芳正前総務相(写真・長谷川 新)
10月16日、国会内で自民党の林芳正前総務相が日本の美容産業を支援する新たな議員連盟の設立総会を開いた。林氏が会長に就任し、議連の名称は「J-Beauty(ビューティー)産業振興議連」となった。
「Jビューティー」とは、日本製の化粧品、美容家電、美容機器、ヘア、ネイル、エステ等の商材やサービスの総称のこと。2024年時点で、日本の美容産業は市場規模10兆円、雇用者数は約1000万人に達している。
政治部記者が言う。
「議連のはじまりは、旧宏池会の金子容三衆院議員が2025年春に地元・長崎県の美容機器メーカーから日本の美容業界は韓国に後れを取っていると陳情を受けたことだそうです。金子氏は同じ旧宏池会の先輩である小林史明衆院議員に相談。その後、旧宏池会の林氏がまとめ役を引き受け、2025年6月に自身を代表世話人として勉強会として立ち上げたのが、自民党議員ら有志で構成する『J-Beauty産業研究会』でした。同研究会は2026年5月、Jビューティーを日本の国家成長戦略に組み込むよう、政府に申し入れました。その結果、『骨太の方針』など政府3文書に盛り込まれ、国家戦略産業のひとつとして位置付けられたのです。背景には『Kビューティー』と呼ばれる韓国のビューティー産業の躍進があります。韓国は美容産業を戦略産業として位置付け、海外展開をコンテンツ産業と連携することにより加速。日本の化粧品の輸出額は約5200億円(2024年)ですが、韓国の同年の輸出額は約1兆5300億円と3倍近い差があり、それに追いつけ、追い越せという戦略なのだと思います」
高市早苗首相を本部長とする知的財産戦略本部が2026年6月に決定した「知的財産推進計画」では、《化粧品の海外展開及び国際競争力の強化を図る際には、化粧品をはじめとするJ-Beauty産業全体が一体となってブランド価値向上を目指すことも重要であり、関係業界が連携した協調領域での取組の強化が求められている》と明記されている。
また、同年7月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」にも《「知的財産推進計画2026」に基づき、知的財産・無形資産の活用・保護・標準化の国家戦略や経営における活用を促進するとともに、コンテンツと連携した日本の魅力の発信、農林水産物・食品・ファッション・J-beautyなど一体的なブランディングによる価値創出等による新たなクールジャパン戦略を推進する》と記されている。
さらに同日、閣議決定された「日本成長戦略」においても《コンテンツや農林水産物・食品・ファッション・J-beautyなど日本が競争力を持つ分野における海外の成長市場獲得に向け、JETROや在外公館を含む支援機関の体制を強化していく》との表記があり、政府が成長戦略のひとつとして、Jビューティーに力を入れていることがうかがえる。そうした背景もあり、今回の議連の最高顧問には、高市首相を迎えることで調整しているという。
「経済産業省はJビューティーのうちの化粧品については、日本からの輸出額と現地生産・現地販売の出荷額について約8000億円(2024年)を2033年までに2.5倍の2兆円に引き上げる目標を掲げています。政府が掲げる17の重点分野の成長戦略のうち、美容産業であるJビューティーはコンテンツ産業に位置づけられ、コンテンツ産業には2033年までに約34兆円の官民投資が見込まれていますが、Jビューティー単体での官民投資の詳細は今のところあきらかになっていません。今回、林氏が会長に就任した同議連は、今政府が進めている成長戦略ですから、高市首相を最高顧問に迎えるという意味は理解できます。ただ、林氏は来年秋の自民党総裁選で、高市氏の最大のライバルと目されていますから、その2人が会長と最高顧問という関係になることは意外で、永田町ではちょっとした話題になっています」(前出の記者)
設立総会には、きっかけを作った金子氏、小林氏、林氏のほかに西村康稔選対委員長や加藤勝信党政治制度改革本部長の姿もあった。
同議連の林会長が高市氏を最高顧問で調整していることについて、自民党関係者が言う。
「2人は次期総裁選のライバルではありますが、永田町では自分より立場が上の人を入れることは、自分が立ち上げた会にはプラスに働くので、高市さんを最高顧問に迎え入れようということだと思います。総裁選は総裁選、議連は議連と林さんは分けて考えているはずです。ただ、過去にアニメ、漫画、日本の食文化などの海外展開をするため、安倍政権が2013年に設立したクールジャパン機構の失敗があります。これに政府は1400億円を投じました。今回の成長戦略では新たなクールジャパンと謳われていますが、成功する保証はあるのかどうか。自民党内ではまた同じ失敗を繰り返す気なのか、と冷めた声も聞かれます。成長戦略全体では、2040年度までに官民あわせて370兆円超と巨額な投資計画となっています。国民からの『税金の無駄遣い』『国民の生活を支える施策にこそ使うべき』といった批判にも耳を傾けながら進めないと、かつての二の舞になってしまいかねません」
また、政治部デスクはこう話す。
「高市首相は林氏とライバル関係にありますが、林氏が正面から顧問として就任するよう首相側に頼み、首相も参加を了承したと聞きました」
本誌は林氏の事務所に対し、議連の設立について、また高市首相を同議連の最高顧問に迎え入れることは事実か、そして「Jビューティー産業振興議連」が「クールジャパン機構」の二の舞になるのではないかという懸念があることについて質問をしたが、期限までに回答はなかった。
新たな「クールジャパン戦略」のひとつであるJビューティーは、投資に見合った結果を残すことができるだろうか。
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