2025年10月、岩手県盛岡市中心部の河川敷を移動するツキノワグマ(写真・共同通信)
史上最悪だった2025年度のクマ被害は、死者13人、人身被害238人、出没5万801件。2026年度は10月14日時点で死者6人、人身被害68人、出没1万9789件。前年度を下回るが、被害は深刻だ。
「クマの出没には、重要な餌資源である『ブナの実』の豊凶が大きく影響します」
そう語るのは、株式会社BeST鳥獣対策事務所(新潟県長岡市)代表で、長年、クマの調査をおこなってきた梅村佳寛氏だ。
「2025年、ブナは凶作でした。近年はクマの分布域の拡大や個体数の増加により、ブナの豊凶だけで出没を語ることはできませんが、影響は大きいと考えています。2025年10月、とくに被害や出没が多かったのは、ブナの凶作による影響だと見ています。
2026年は、早い時期の出没は前年同様多かったのですが、ブナの実る8月以降は、前年と比べてかなり少なくなっています。新潟県の調査では、2026年のブナは『大豊作』といっていいレベルでした」(梅村氏)
東北森林管理局の発表でも、2026年秋のブナは、岩手県、宮城県、山形県で豊作、青森県と秋田県で並作となっている。
だが、このことが逆に心配でもあるのだという。
「ブナは豊凶を繰り返すことで知られています。凶作は2〜3年続くこともありますが、豊作が2年続くことはほとんどありません。近年の新潟県のブナの豊凶指数を見ると、2026年と同じレベルの大豊作だったのが2011年ですが、翌2012年は最低レベルの凶作でした。2025年のような、クマの大量出没になることも考えられます」(梅村氏)
クマ被害の急増により、政府は2025年9月から、市町村長の判断によって市街地などでも猟銃を使用した駆除ができる「緊急銃猟」を実施。そのほか、民間ではドローンを使った対策も進められている。
「クマが嫌がるオオカミの尿などの臭いや成分を含んだボールを、ドローンから発射します。クマに当てる必要はなく、近くでボールが割れれば、クマは人里に近づかなくなります」
そう語るのは、ドローン事業を手がけるFor Nature(本社・愛知県名古屋市)の安田公也社長だ。オオカミの尿は、害獣忌避用品として米国産のものなどが日本でも市販されている。大型のドローンは、物流用のものをベースに、消火活動のために開発していた装置を転用したのだという。ボールは、ピッチングマシンと同じ仕組みで高速発射される。
「この匂いは2カ月程度持つといわれています。ですから、クマがよく通る箇所などを調べ、そこへこのボールを撒いておけば、クマを人里に近寄らせない効果があると思っています」(安田氏)
現在はまだ実証実験を続けている段階だというが、ドローンを用いることで、人とクマが直接、対峙する必要がなくなり、リスクは大幅に減少するはずだ。早期の実用化に期待したい。
10月から11月にかけ、冬眠前のクマは活動がもっとも活発になる。前出の梅村氏はこうアドバイスする。
「もし山などに行かれる際には、クマ撃退スプレーを携行されたほうがいいと思います。しかし、ただ持っているだけでなく、事前に使い方をしっかりと確認しておくこと。いざというときに使えないのでは、意味がありません。また、誤った使い方で被害に遭うケースもあるので、気をつけていただきたいです」
ドローン技術がクマ撃退の鍵を握りそうだ。
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