
クレカで1069万円を不正利用された人気配信者
連日のようにニュースをにぎわせている、企業へのサイバー攻撃と大規模な個人情報流出。2026年はすでに216件もの情報流出事案が公表され、2025年1年間の2.6倍という異常事態だ。とくに夏以降に急増しており、企業側は「安全対策の強化」をうたうが、その裏で“本当の地獄”を見ているのは、理不尽に情報を抜かれた個人たちである。
「これまでハッカーがサイトごとに弱点を探すには手間がかかりましたが、高性能な生成AIの登場により『攻撃と防御のパワーバランス』が完全に崩れました」
そう警鐘を鳴らすのは、都内のIT系企業でセキュリティ対策に携わる男性だ。
「最近は企業の内部ネットワークに深く侵入せずとも、AIがウェブサイトや予約アプリのシステムを網羅的に調べ、直接、弱点を突く手口が急増しています。こうして、短時間で盗み出された個人情報やクレジットカード情報は、即座に売買され、スキミングや不正利用のターゲットにされるのです。個人の自衛だけでは防ぎきれないフェーズに入っています」
実際、このAIを悪用した「見えない手」によって、1000万円を超える甚大なクレカ不正被害に遭った人物がいる。TikTokのファンダム大会で日本5位に輝くなど、絶大な人気を誇るライブ配信者「やっちゃんタイの兄貴」だ。
「2024年10月でした。AMEXの担当者から『Amazonで不正取引の可能性がありますが、使われましたか?』と電話がかかってきたんです。身に覚えがないので、その日にすぐカードを止め、さかのぼって調べたら、なんと1年前から不正利用され続けていたことがわかりました。被害総額は約1069万円に上りました」
彼の場合、まったく利用していなかったAmazonやApple Payを通じて、3万円や10万円といった金額が引き落とされ続けていたという。
「僕にとっては数万円の決済は日常的なので、明細を見てもすぐには怪しいと思わなかったんです。不正利用するほうも、自動検知に引っかからないよう、探りながら金額を調整していたんだと思います。ライブ配信でこの話をしたら『私も毎月500円や1000円をポチポチ抜かれていた』というリスナーがめちゃくちゃいました。人間が手作業でやれる件数じゃない。絶対にAIなどのシステムでやっていますよ。どこで情報が流出したのかもわかりません。ネット決済はたびたび利用しているので、どこかでハッキングされたのだと思います」
悲劇はこれだけではない。カード会社を信じていた彼を待っていたのは、あまりに冷酷な「ルール」だった。
「カード会社の補償は『受付から60日以内のものしか対象にならない』と宣告されました。つまり、発覚するまでに61日前以降の抜かれていた約1000万円は、いっさい返ってこないんです。しかも事実確認のために『部署が違うのでこちらにかけてくれ』『Amazonに直接問い合わせて履歴を出して再提出しろ』とたらい回しにされました」
情報流出どころか、被害そのものに気がつけないケースがあるというわけだ。
「カード会社は事務的で、催促すらない。この煩わしさで被害者に『数千円や数万円だし、あきらめよう』と思わせるのが、詐欺グループが成功している理由なんでしょうね。カードのセキュリティが強いなんて、思い込まないほうがいいですよ」
明日は我が身。企業のシステムの脆弱性から流出したあなたのカード情報もいま、悪用されたAIによって静かに削り取られているかもしれない。
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