トランプ米大統領に“べったり外交”を続けてきた高市早苗首相(写真・共同通信)
まさに大惨敗——。日本時間11月4日に投開票された米中間選挙は、野党・民主党が上下両院で過半数を奪還するという結果になった。
「かなりの衝撃ですね。とくに、これまで熱心な共和党支持で知られていたテキサス州では、38年ぶりに上院で民主党が勝利し、カンザス州でも94年ぶりに民主党が上院議席を獲得しました。
共通するのは、トランプ大統領へ『ノー』という意思表示がおこなわれたということです。大統領の言葉をすべて信じる“MAGA信者”は別として、穏健な共和党員はイラン攻撃による燃料高や物価高に対し、何も手を打てていないと不満がたまっているようです。
また、ヒスパニック系を中心に、移民の強制排除などへの反発が高まっています。さらに、若い世代を中心に格差是正を求める動きも活発化しています」(在米の日本メディア記者)
いずれにせよ、議会での主導権を失い、レームダック化すらささやかれるなか、追い詰められたホワイトハウスの主は今後、どのような行動に出るのか。上智大学教授の前嶋和弘氏は、こう指摘する。
「トランプ大統領は、第2次政権で基本的に議会を迂回して、好きなように動いてきました。議会で共和党の数が減っても変わらないでしょうね。たしかに、予算については議会に握られていますが、そうであれば、大統領の権限である程度、自由に動ける外交・安全保障の分野で“レガシー”を作ろうとするんじゃないかという見方もあります」
実際、選挙前にはトランプ大統領がイランへ核攻撃をおこなう、という情報も流れていた。
「いわゆる“マッドマン・セオリー(狂人理論)”ということでしょう。核攻撃という常軌を逸した決断をするかもしれないと思わせて、イラン側を妥協させるように動くというわけです。ただ、イランも簡単には動かないでしょう。戦争が泥沼化し、本当に歯止めが利かなくなる可能性があります。
日本にとって怖いのは、日本や韓国に対する露骨な形での軍事費増額を出してくるかもしれないことです。さらに、トランプ大統領は金正恩総書記との会談を進めようとしています。北朝鮮と話し合って、核保有を一部認め、その代わり、アメリカに届くICBM(大陸間弾道ミサイル)はやめてくれという約束をとりつけるかもしれません。
さらに、関税をめぐり日本が米国に約束した5500億ドルの投資についても、もっと急げとせかされる可能性もあるでしょう。日本にとってはこれからが正念場です」
国際ジャーナリストの山田敏弘氏も、こう警鐘を鳴らす。
「トランプ大統領は、議会から3度めの弾劾訴追を受ける可能性がでてきました。米国民の目をそらす目的で、海外で問題を起こす可能性はありますね。
撤退までちらつかせつつ、在日米軍や在韓米軍へ予算増額を求める可能性はあります。最悪の場合、軍事演習の停止などを強行し、米国、在日米軍、在韓米軍の3者が一斉に機能しなくなる恐れがあります。
いずれにせよ2027年以降、トランプの動向次第で東アジアの安全保障環境が大きく揺さぶられる危険性があります」
一方で、ジャーナリストの鮫島浩氏は、別の可能性を指摘する。
「さすがにここまで選挙でボロ負けしてしまうと、権力を失った後の報復を恐れて軟着陸を目指し、外交路線もマイルドになるのではないでしょうか。しかし、別の懸念があります。
安全保障の面では、先日の米中首脳会談でも見られたように、日本はすでに外交のはしごを完全に外されているんです。日本の経済力は落ち、アメリカにとって最大のテーマは、ロシアや中国と直接、話し合って落としどころを見つけることへとシフトしました。超大国同士が手を握れば、中国を牽制するという日本の役割はなくなります」
さらに、11月に予定されているAPECでは、史上初の米中ロ首脳会談が開催される可能性もあると報じられている。この米国外交における“日本外し”の波紋は、高市早苗首相を直撃する。鮫島氏が続ける。
「高市首相は路線的にトランプべったりでしたから、アメリカの民主党にはまったくパイプもないし、敵視される可能性すらあります。そうなると政治的立場は弱まり、自民党内でも民主党寄りの岸田文雄氏、中国に近い林芳正氏などが動きやすくなります。トランプ政権がレームダック化していくと『高市じゃなくてもいいのかな』という雰囲気が、1年後の総裁選までに出てくる可能性はありますね」
米国一辺倒の外交を続ければ、日本は孤立無援に陥りかねない。高市首相には、外交における強いリーダーシップを求めたいところだが、はたして、かなうだろうか。
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