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マカオもシンガポールも閑古鳥なのに…カンボジアのカジノ圧勝の理由
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2018.08.08 06:00 最終更新日:2018.08.08 06:00
「カジノで外国人観光客を日本に呼び込む」という政府の発想は時代遅れもはなはだしい。先の国会で可決、成立したいわゆる「カジノ法案」(統合型リゾート実施法)であるが、カジノを取り巻く国際情勢を無視している。
菅官房長官のお膝元の横浜はカジノ特区誘致が確実視されているが、地元の港湾関係者や建設業者はもとより、ゲーム機メーカーも「儲かりそうにない」と様子見。
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アジア地域でカジノが繁盛していたのはマカオ、シンガポール、カンボジアが御三家。しかし、カンボジア以外はいずこも集客が減り、収益も急落中。その最大の理由は中国人ギャンブラーの減少である。
実は、マカオやシンガポールのカジノで大枚を投じていたのは中国の党や政府の幹部たちだった。その実態は資金洗浄であり、事前に胴元とすり合わせをし、裏金を渡した上で、「勝った、負けた」の振りをしながら、最終的に利益を懐に入れて帰国する仕掛けができていた。
個人マネーではなく公金であるため、1回の掛け金も100万円や200万円は当たり前。数千万から数億円単位での「洗浄資金」ありきのカジノブームであった。
ところが、習近平国家主席が綱紀粛正を掲げ、幹部の腐敗を徹底的に取り締まるようになったため、カジノを訪れる公金持参の中国人は激減。
その結果、マカオもシンガポールもカジノは閑古鳥が鳴く有様。もちろん、少額の掛け金でスロットマシーンやバカラ、ルーレットを楽しむ個人客はいるが、投じられるお金は微々たるものだ。
本家のアメリカやフランスでもカジノは倒産が相次いでいる。ベトナム、マレーシア、フィリピン、韓国でもカジノが林立したが、実際は儲かっていない。唯一、気を吐いているのがカンボジアである。
7月29日の国政選挙では、フン・セン首相率いる与党が、全議席を獲得するという大勝利をあげた。まさに、胴元が勝つように仕組まれた選挙であった。
そして、30年にわたって独裁体制を維持してきたフン・セン首相のお気に入りがカジノ・ビジネスである。中国から膨大なインフラ投資資金が流入したおかげで、65カ所を数えるカンボジアのカジノはいずこも大繁盛。
なにしろ、中国とカンボジアは週87便の直行便で結ばれている。タイやベトナムとも国道で直結。なかでもシアヌークビレはカジノのためにできた町だ。この2年間で13億ドルの資金を投入し、リゾート整備を進めてきた。
中国はカンボジアに2020年までに毎年200万人のカジノ客を送り込むと約束。カンボジア政府も中国人にはビザを免除するなど阿吽の呼吸で対応。
もちろん、日本のように「入場料6000円徴収し、入場回数も週3回に制限し、収益の30%を国庫に納めさせる」というような無粋なことはしていない。
日本の国会では「依存症が懸念される」といった意見も出されたが、日本人のギャンブル欲は減っており、パチンコも競艇も売り上げが激減している。
カジノ経営をめぐる厳しい環境を無視し、勝手な思い込みでカジノを開いたところで、政府の目論見は絵に描いた餅に終わるだろう。
訪日客の大半はギャンブルなど求めていない。カジノではなく、日本の伝統文化やハイテクサービスで勝負を賭けるべきだろう。(国際政治経済学者・浜田和幸)