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アジア大会で盛り上がるジャカルタに「水没」の危機が迫る

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2018.08.21 16:00 最終更新日:2018.08.21 16:00

アジア大会で盛り上がるジャカルタに「水没」の危機が迫る

写真:Barcroft Media/アフロ

 

 8月18日、アジアのスポーツの祭典、第18回アジア競技大会がインドネシアのジャカルタで開幕した。オリンピックより競技種目も多く、主催国の独自色が売り物である。

 

 

 今回の大会ではロシアの武道「サンボ」やパラシュートの腕を競う「パラグライディング」、日本でも徐々に人気の「ジェットスキー」に加えて、インドネシア人の国民的頭脳ゲーム「ブリッジ」まで競技種目として採用された。

 

 参加国は45の国と地域。選手の数は1万人を優に超える。日本の選手団だけで1096人だ。報道陣、応援団を加えると大変な数になる。

 

 ただでさえ交通渋滞がアジア最悪と言われるジャカルタでは、いたるところで大混乱が発生中。そのため、小学校も中学校もすべて休校となった。バスも車も動かないためである。

 

 10万人を超える警察官と軍隊が交通整理や治安維持に当たっているが、ウィドド大統領もバイクで移動せざるを得ないような有様だ。

 

 そんなジャカルタで、今、深刻な問題が発生している。何かといえば、1000万人が暮らす首都が水没の危機に瀕しているのである。

 

 もともと沼地だったジャカルタ市内には13の河川が流れている。これまでも河川の氾濫は日常茶飯事であった。

 

 しかし、地下水をくみ上げ過ぎて、市内全域で毎年平均15センチほど地面が陥没しているという。現時点でも、市の半分以上が海抜ゼロメートル地帯になってしまった。このままでは、2050年までにジャカルタが水没してしまうのは確実視される。

 

 最大の原因は生活用水の不足である。ジャカルタの市当局が提供しているのは住民の必要とする水の4割ほど。そのため、大半の住民は勝手に井戸を掘り、飲料水から水浴用の水まで自前で確保するのが当たり前。

 

 今回のアジア大会の期間中は競技会場周辺の河川にはすべて蓋をして悪臭と見栄えの悪さを隠しているのだが……。

 

 政府も危機感を強め、対策に追われているようだ。河川の水や雨水を貯水池に貯め、浄化して提供するなど努力は重ねているのだが、水道管の敷設は間に合っていない。

 

 実は、東京でも半世紀前には同様の問題に直面していたが、規制の導入などで地面の陥没や水没を防ぐことに成功。

 

 ジャカルタでは日本の経験や技術を導入したいと希望しているが、資金不足がネックとなったまま。東南アジア最大の人口を有するインドネシアであるが、観光地のバリやロンボク島での火山噴火や地震に加え、ジャカルタの水没という建国以来最大の危機に直面しているのである。

 

 今回のアジア大会の開会式では南北朝鮮チームが統一旗の下、合同で行進するなど、「ピョンチャン五輪の再来か」と話題となっている。しかし、足元を固めなければ主催都市ジャカルタは消滅しかねない。

 

 大会開催費用は日本円で約3520億円。それだけのお金があれば、ジャカルタの水没を食い止められるだろうに。(国際政治経済学者 浜田和幸)

 

 

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