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検査データ改竄の「KYB」戦前は「ゼロ戦の脚」を作っていた
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2018.10.30 06:00 最終更新日:2018.10.30 06:00
オイルダンパーと呼ばれる免震・制震装置の検査データを15年以上に渡って改竄していたKYB。オイルダンパーは、油圧を利用して、衝撃や振動をやわらげる装置のことだ。
同社の歴史は古く、1919年、萱場資郎が創業した萱場発明研究所(後の萱場製作所)が原点だ。
仙台に生まれた萱場は、東北学院を卒業後、早稲田大学の工科に進学。当時は第一次世界大戦の真っ最中で、兵器研究に没頭することになる。
油圧技術にくわしい萱場は、その後、海軍艦政本部の嘱託となり、さまざまな兵器を開発する。
海軍で開発した兵器は主に3つある。1つ目は、油圧を使って航空母艦から飛行機を飛ばすカタパルト。さらに、空母に着艦した飛行機を止めるための、油圧式制動装置。
そして、もっとも広く採用されたのが、飛行機が着陸するときの衝撃を減らす油圧式の緩衝脚「オレオ」だ。従来、着陸時にはひどいバウンドに悩まされていたが、オレオ採用後は、安定した着陸が可能になった。ゼロ戦はじめ、数多くの飛行機で採用されている。
1935年(昭和10年)、萱場は陸軍の支援でオートジャイロ「カ号観測機」を製造。オートジャイロは回転翼を持つヘリコプターのような飛行機で、狭い場所で離発着できる。ヘリが存在しない時代、偵察に有効だとされた。
翌年には、やはり陸軍の支援でジェットエンジン搭載の近距離戦闘機の開発に着手するが、こちらは実現しなかった。
軍需企業として急成長した萱場製作所は、戦後、自動車や二輪車の緩衝器を中心に事業を建て直す。ゼロ戦に採用されたオレオは、そのまま車の振動を減らす「ショックアブソーバー」に応用できたからだ。現在では、油圧技術を使ったミキサー車など特殊車両の製造もおこなっている。
KYBのオイルダンパーのシェアは国内で45%を占めるが、売上高でいえば1%にも満たない。売上高の実に4割が、自動車向けのショックアブソーバーなのだ。