社会・政治
「保育園落ちた日本死ね」問題の本質は厚労省のゴマカシ
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2016.03.06 06:00 最終更新日:2016.03.09 14:43
大阪観光大学観光学研究所客員研究員の濱田浩一郎氏が、「保育園落ちた日本死ね」問題の本質は厚労省のゴマカシだと指摘する。
2016年2月15日に公開された匿名のブログが話題を集めている。そのタイトルは「保育園落ちた日本死ね!!!」。
保育園に子供の入園を申し込んだものの、断られたブロガーが「何なんだよ日本。一億総活躍社会じゃねーのかよ。昨日見事に保育園落ちたわ。どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか」と、日本に対する絶望を記述したところ、芸能界や論壇、メディア、国会で賛否両論取り混ぜた議論となっているのだ。
「子供を産んで子育てして社会に出て働いて」「子供産んだはいいけど」という記述があるので、おそらくこのブロガーは働く女性であろう。「何が少子化だよクソ」「ふざけんな日本」と乱暴ともいえる言葉遣いが、ストレートに怒りを表現している。
直球すぎる表現のせいか反発もあり、日本死ねブログに対するコメントにも「夫が悪い! 男が悪い! 国が悪い! 会社が悪い! 社会が悪い! ワタクシは悪い! いつまでも依存するのが当然だと思ってる醜い生き物が多いねw」と批判ととれる書き込みが存在する。
その一方で、賛成論も多数寄せられており、人気ロックバンドGLAYのボーカルTERUなどは、「話題になってる問題。僕はこの女性を支持します。実際、僕の個人事務所の経理を任せてる妹や従姉妹が全く同じ問題で苦しんできました。2年がかりで受け入れられはしましたが、政府には本気で考えて欲しい問題です」と、身近な問題として政府に待機児童の解決を促した。
国会でもこの問題は取り上げられ、安倍首相は2月29日、衆院予算委員会で「匿名である以上、実際本当に起こっているか、確認しようがない」などと答弁し、見事にスルーしている。
保育園落ちた問題が、「日本死ね」という表現があったせいで、愛国心や現政権の賛否の議論にまで発展しているのだが、今回のブログは言葉こそ乱暴であるが、「(五輪の)エンブレムとかどうでもいいから保育園作れよ」と、とにかく保育園を作れという要求のみだ。
かつて「政府が右と言っているのに我々が左と言うわけにはいかない」との発言をした籾井勝人(NHK会長)よりは、匿名であっても秀逸な問題提起だ。政権支持者であろうが、政府批判すべきことは批判する態度が大切であろう。
それにしても、子供の人口が減っているのに、なぜ相も変わらず保育園が足らないのか。
日本では、幼稚園が文部省の管轄、保育園が厚労省の管轄になっている。
じつは、厚労省は2001年、待機児童の定義を変えている。たとえ第一希望の保育園に入れなくても、幼稚園の一時預かりを利用したり、保護者が育休中の場合、待機児童として集計されないのだ。
この定義の変更で、当時1万数千人もの待機児童が見かけで減少し、そのごまかしは15年たった今も続いている。
ここに、日本が抱える大きな問題があるのではないか。定義を変えて実態を覆い隠すのは、行政がよくやる詐術だ。こうした問題をこそ、マスコミは指摘すべきだろう。
(著者略歴)濱田浩一郎(はまだ・こういちろう)
1983年生まれ、兵庫県相生市出身。歴史学者、作家、評論家。現在、大阪観光大学観光学研究所客員研究員。現代社会の諸問題に歴史学を援用し、解決策を提示する新進気鋭の研究者。著書に『日本史に学ぶリストラ回避術』『現代日本を操った黒幕たち』ほか多数