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暴言で辞任した明石市長に「こどもを増やした」秘訣を聞く

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2019.02.21 11:00 最終更新日:2022.01.11 07:42

暴言で辞任した明石市長に「こどもを増やした」秘訣を聞く

 

 2013年3月末と2018年正月の住民票を比較して、明石市は0~4歳人口が700人近く増加している。よく「人口が増えた」「減った」と言うが、それは総人口の話であり、年齢別に確認しないと実態は見えない。

 

 たとえば大阪市は、マンションの急増で総人口は3万9000人も増えたが、0~4歳児は3000人弱も減っている。京都市でも神戸市でも、乳幼児は減少中。首都圏1都3県でも、総人口は73万人も増えたのに、0~4歳児は3万人近く減っている。そんな時代に、明石市では0~4歳児が増えているのだ。

 

 

 これはいったいどうしてなのか。1月29日に発覚した暴言事件の責任をとって辞職した泉房穂・明石市長に話を聞いた(インタビューは辞職前)。

 

「今ね、うち(明石市役所)の局長や部長級の娘や息子が次々と明石へ帰ってきているんです。18歳19歳の大学進学で京都とか大阪とか神戸とかに出て就職し、結婚もしてしまった娘や息子が子どもを産んだ後で、また明石へ戻ってきています。

 

 明石市の子育て支援策が充実しているからです。だから私は言ってます。高校出て一人娘が出ていってしまっても、結婚相手を見つけて、子どもも産んでトリプル(3人)で帰ってこいという施策やと。


 
 そして、帰ってから2人目を産んだら4人だと。1人減っても4人になる。これがまちを元気に、にぎやかにする」

 

 明石は住宅開発余地は少なく、わざわざここに家を買わずとも、大阪や神戸の都心でマンションがいくらでも売られている。また、明石のような老舗の工業都市には共通することだが、機械化・自動化にともなって工場の雇用は減っている。

 

 しかも明石は、商店街の最大の存立要因だった淡路へのフェリーを、明石海峡大橋の架橋で失ってしまった。にもかかわらず、0~4歳人口が増えているのは、いったいなぜか。

 

「私が市長になった7年前、明石市は結構しんどかったんですよね。毎年人口が減って、子どもの数も減り続け、ずっと赤字経営でした。

 

 にもかかわらず、言われているのは昔ながらの、観光客をもっと集めるだとか。でも、何かがあるわけじゃない。そこで私としては、今という時代における明石の状況を冷静に見ざるを得ない、と考えました。

 

 私の戦略はきわめて明快なんです。結局、明石のプラスとマイナスを考える。プラスは、雇用施策をしなくても大阪や神戸の通勤層が明石に住めるところ。

 

 また、地価が芦屋・西宮・神戸の東灘などよりも安いところ。この点は、2人目の子どもを産みたい層からすると、もう一つ勉強部屋が欲しいけど、芦屋だと一部屋のところ明石だったらもう一部屋つくれるというふうにプラスに働きます」

 

 たしかに明石の住居費は、ざっくり芦屋の半分ほどだ。


 だから、雇用施策であえて無理をしなくても、暮らす・育てるに特化した施策を打てば、必ず人は集まると考えたという。

 

「2003~2005年に国会議員をさせていただいた時に、フランスの少子化対策を勉強しました。びっくりしたのは、子どもを3人産んだら公共交通機関や公共施設などが家族全員割引になるとか、配偶者の子でなくても産んだら老後の年金が増えるとか、なんか人生ゲームみたいだと思いましたね(笑)。

 

 でも逆に、人生ゲームのような分かりやすいインセンティブを働かせれば、子どもは増えるんだと学びました。

 

 もう一つ考えたのは、安定的で持続可能なまちづくりをするためには、納税者・支え手を増やす必要がある、と。だからインセンティブの働く施策を打つ、そして中間層をゲットする、この2つが戦略です。

 

 たとえば、明石市で生まれ育った方が18歳で大学に出ます、京都や大阪に行きます。そして、22歳で就職し、たとえば神戸市の東灘とかで結婚します。そこまではきっぱりあきらめる。つまり、大学誘致とか企業誘致でそうした層を取り込もうとはしない。

 

 その代わりできることは、結婚して1人目を産んだ層に対し、2人目も欲しいけど困っているなら、じゃあ明石に来れば2人目以降の保育料も無料です、子育て施設も無料で利用できます、医療費も当然無料です、しかも広く住めます、2人目の子ども部屋もつくれます、と訴える。

 

 これを広く発信すれば、帰ってきてくれるんじゃないかと思いました。そこは完全に戦略で、狙ってました。

 

 そして、そういった層は教育熱心だから、経済的な負担軽減だけじゃなく、駅前の一等地に従来の面積を4倍にした図書館をつくり、本の貸し出し年間300万冊という目標を掲げることが、彼らへのアピールにもなると考えていました。

 

 教育重視のまちになって、子育ての負担軽減にとどまらず、わが子のふるさとにしてしかるべきまちとしてのブランドを高めれば、18歳で逃げていった層が戻ってくると思いました。

 

 なので、先ほどの局長や部長級の娘さんたちが戻ってきているという話を聞くと、本当に読みがあたったな、とうれしくなりますね」

 

 

 以上、『子どもが増えた!~明石市 人口増・税収増の自治体経営』(光文社新書)をもとに再構成しました。湯浅誠氏、泉房穂氏、藻谷浩介氏、村木厚子氏らが、明石市の「子どもを核としたまちづくり」について考えます。

 

●『子どもが増えた!』詳細はこちら

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