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ショーンKに教えたい「破滅しないホラ」の吹き方

社会・政治 投稿日:2016.04.01 11:00FLASH編集部

ショーンKに教えたい「破滅しないホラ」の吹き方

写真:AFLO

 

 ショーンKことショーン・マクアードル川上氏。ラジオパーソナリティー、タレントとして、『報道ステーション』(テレビ朝日)や『とくダネ!』(フジテレビ)に出演、コメンテーターとしても信用を集めていた。

 

 ハーバード・ビジネス・スクールでМBA(経営学修士)を取得、経営コンサルタントとしての肩書も、発言の信用に一役買っていた。

 

 ところが、「週刊文春」が同氏の経歴詐称を報じたことで、状況は一変。キャリアの大半がウソであったことがわかり、とうとう活動を自粛してしまった。

 

「何をどのように伝えられても今回の取り返しのつかない事態の発端と過ちの原因、その責任はこの私にあります。このことを重く重く受け止め、長らくの休業、メディア活動の休止を決断いたしました」と自身のラジオ番組で涙ながらに語り、一連の騒動を謝罪した。

 

 ショーンK氏は、地元・熊本で「ホラッチョ(ホラ吹き)」という不名誉なあだ名で呼ばれていたという。

 

 夏目漱石は『坊っちゃん』で「新聞程の法螺(ホラ)吹きはあるまい」と書いているが、昔は「ホラ吹き」という言葉にそれほど強い非難のニュアンスが込められていたようには思えない。むしろ、親愛の情さえ含んでいたような気がする。

 

 かつて、フェルナン・メンデス・ピント(1509?~1583)というポルトガル人の冒険家がいた。アジア・アフリカなど広く諸国を巡り歩いた記録として、『東洋遍歴』を残した。

 

 だが、その中の記述がどこまでが本当で、どこからがウソなのか、よくわからない。海賊に襲撃されたりして「13回捕虜になり、17回身を売られた21年」(東洋文庫版より)といった記述は、あまりに疑わしい。

 

 実際、ピントの友人が種子島の王ナウタキンに初めて鉄砲を贈ったところ、わずか5カ月半のうちに島で600丁以上の鉄砲が作られた、などといった記述があり、さすがにこの冒険記を信じるには無理がある。

 

 それで、ピントは長らくホラ吹きと呼ばれてきた。ただし、悪口ではなく、愛称として。ウソはウソに違いないのに、どうして親しみをもって愛されてきたのか。

 

  おそらく、自らの体験を虚実交えて、面白おかしく書いたことがよかったのだろう。世界の民話には、奇想天外なホラ話で、人々を楽しませる「ホラ吹き」もたくさん登場する。

 

 ウソ(ホラ)は、人を騙すものには違いないが、民衆を楽しませ、想像をかきたてるウソは許容されてきた。一方、ショーンK氏の経歴詐称は、あまりにもリアル、生々しすぎて、相手を楽しませようとする気持ちは感じられない。ただの騙しだ。

 

 今日はエイプリル・フール。ぜひとも、あなたも相手を楽しませるようなウソをついてほしい――。 

 

 

(著者略歴)

濱田浩一郎(はまだ・こういちろう)

 1983年生まれ、兵庫県相生市出身。歴史学者、作家、評論家。現在、大阪観光大学観光学研究所客員研究員。現代社会の諸問題に歴史学を援用し、解決策を提示する新進気鋭の研究者。著書に『日本史に学ぶリストラ回避術』『現代日本を操った黒幕たち』ほか多数

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