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「人生再設計」って何だ!安倍内閣のスローガン空虚すぎる
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2019.04.22 16:00 最終更新日:2019.04.22 16:00
安倍内閣が「就職氷河期世代」という呼び方を「人生再設計第一世代」に変更することを決定し、当事者から怒りの声があがっている。
就職氷河期世代は、バブル崩壊後に就職活動の時期を迎えた世代で、現在30代半ばから40代半ばの約1700万人。
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この世代の多くが就活で苦労し、フリーターや非正規労働者になっている。低収入の人も多く、政府は職業訓練の支援や企業への人件費補助など救済措置を進める方針だ。
だが、「人生再設計第一世代」という言い方に怒りを覚えた人も多く、ツイッター上では、作家の平野啓一郎氏が《よくこんな胸クソ悪くなる言い換え、思いつくよな。》と書くなど、怨嗟の声が噴出している。
コラムニストの小田嶋隆氏がこう話す。
「『就職氷河期世代』という用語もネガティブな響きを持つ言葉でしたが、善し悪しはともかく、この世代の雇用状況が最悪だったという事実を踏まえている点で、現実に即しています。
ところが、『人生再設計世代』という言い方は、彼らの人生のやり直しを、本人たちの再設計に丸投げしている印象を与えます。
新卒で就職をしくじっても、中途採用なりの労働市場が活性化していれば、最初のつまづきを20年もひきずることはなかったはず。『人生再設計世代』という言い方は、社会のせいで置き去りにされたという視点をまったく欠いています。その点で、単に無神経・失礼なだけでなく、とても残酷な言葉です」
この言葉には、人の人生を「欠損品」のように扱う態度が透けて見え、さらに「第1世代」としたことで、今後「第2世代」「第3世代」が登場することを予期しているように聞こえる。
考えてみると、安倍内閣が発表してきたスローガンには非常に空虚なものが多い。主なものを並べてみよう。
●美しい国
2007年、「『美しい国づくり』プロジェクト」を発表したものの、2回の企画会議が行われた後は立ち消えに。
●女性活躍
2013年に安倍内閣が掲げた「日本再興戦略」の中で「女性の活躍推進の取り組みを」との記載があり、話題になった。
●3年間抱っこし放題
2013年、安倍首相のスピーチで「3歳になるまでは男女がともに子育てに専念でき、しっかりと職場に復帰できるよう保証します」と話し、世の女性たちから困惑と怒りの声があがった。
●SHINE!すべての女性が、輝く日本へ
内閣府男女共同参画局が2014年に立ち上げたブログ名。第1回目は安倍首相が寄稿している。
●一億総活躍社会
2015年に安倍内閣が提唱したプラン。「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」の「新・三本の矢」の実現を目的とする。
●この道を、力強く、前へ
2016年、参議院選の自民党選挙公約。正確には「道半ばではありますが、アベノミクスは確実に『結果』を生み出しています。この道を、力強く、前へ、進んで行こうではありませんか。」
●人づくり革命
2017年、「すべての国民が活躍できる社会をつくるため、人材投資をはかる」として閣議決定されたプラン。
●みんなにチャンス!構想
安倍首相が2017年の記者会見で語った言葉。「人づくり革命」を断行し、日本を誰にでもチャンスがあふれる国へ変えていく、とした。
●働き方改革
ここ2年ほどでおなじみになった言葉。多様な働き方を選択できる社会の実現を目指す。
こうした「耳障りのよい言葉」に対し、前出・小田嶋氏がこう話す。
「官僚用語、たとえば福祉、受給、制度、保障といった実務的な言葉を使わず、ポエムっぽいやさしさを前面に出しています。ニュアンスの幅が広く、後で言い抜けが可能な言葉をわざと用いているのでしょう。どれも上から目線で、国民の自助努力や自己責任に委ねるニュアンスが強いですね」
安倍内閣が発するスローガンからは、日本が抱えるあらゆる問題の解決を「自己責任」に仕向け、政治家の責任を回避する姿勢が明確に見えるのだ。