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墜落した「F35」機体回収した米海軍の切り札は「ゴッホ」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2019.05.08 10:30 最終更新日:2019.05.08 13:58
5月7日、青森県・三沢基地沖で通信が途絶えていた航空自衛隊の最新鋭ステルス戦闘機「F35A」の機体の一部が、海底から回収されたことが明らかになった。引き続き、行方不明のパイロットと残りの機体の捜索が続けられている。
事故を起こしたF35Aは、夜間の戦闘訓練のため、4月9日に4機編隊で基地を離陸。30分後に事故機から「訓練を中止する」と連絡が入った直後、沖合135km地点でレーダーから消えた。事故機のパイロットは約3200時間の飛行を経験しているベテランで、4機の責任者だった。
自衛隊に加え、アメリカ海軍のミサイル駆逐艦「ステザム」や対潜哨戒機「P-8Aポセイドン」などが捜索に投入されたが、墜落地点が不明なことから難航。4月19日、岩屋毅防衛大臣は、シャナハン米国防長官代行と会談し、アメリカ側が墜落現場に深海捜索船を派遣することを発表した。
アメリカ軍がチャーターしたのは、シンガポールのウルトラ・ディープ・ソリューションズ社が保有する「ファン・ゴッホ号」だ。同社は保有船舶に「ピカソ」や「アンディ・ウォーホル」など著名な画家の名前を使用しており、「ファン・ゴッホ」も画家のゴッホから命名されている。
全長は112mに及び、水深3000mから150トンの物体を引き上げることが可能。300mまで潜れる18人乗りの作業艇を搭載し、深海6000mでの物体の探知もできる。4月15日から那覇軍港に停泊していたが、24日に出港し、青森県の沖合約150km、深さ約1500mの海底から機体の一部を引き上げることに成功した。
捜索には、アメリカ海軍の専門チームが乗船している。米軍がこれほどまで熱心に捜索する理由は、もしF35の機体がごく一部でも中国やロシアに奪われたら、世界最高レベルのステルス技術が流出してしまうからだ。米海軍研究所は公式サイトで「中国やロシアが行方不明のF35Aを探している様子はない」(4月26日)と報告しているが、念には念を入れたということだろう。
日本は「F35A」を105機、護衛艦「いずも」などで展開可能な垂直離着陸型「F35B」42機を配備することを決めている。事故後、岩屋防衛大臣は「配備計画を変更する考えはない」と述べているが、実はF35は1機116億円で、147機買えば総額で6兆2000億円にものぼる。大きな利益が見込める戦闘機ビジネスの継続に、アメリカも一安心したはずだ。