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【熊本地震取材記(1)】益城町には日本で3番めの危険な断層が!

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2016.04.19 16:19 最終更新日:2016.04.20 20:07

【熊本地震取材記(1)】益城町には日本で3番めの危険な断層が!

 

  4月14日夜、熊本地方でマグニチュード6.5、最大震度7の地震が発生した。

 

 15日午前、記者は福岡空港を目指した。余震が続くなか、空港が閉鎖される可能性もあったので、熊本空港を避けたのだ。

 

 福岡空港からレンタカーで益城町に向かう。ところが九州自動車道は、地震による路面陥没や段差の発生で、ちょうど半分くらいの南関インターチェンジまでしか行けない。

 

 そこで、高速に並行して走る国道に下りるが、支援物資を積んだトラックなどで大渋滞。現地に到着するのに、福岡から4時間を要した。

 

 ようやく熊本市の市街地に入るものの、倒壊した建物も見当たらず、いつもと変わらない様子。そこからさらに11キロほど郊外に移動、益城町に入ると、様子は一変した。

 

 人口3万4000人ほどの益城町は、熊本市と隣接し、田園風景が広がる静かな町。

 

 だが、30年ほど前から熊本市のベッドタウンとして新興住宅地が造成され、人口は増え続けていた。今回の地震はまさにそうした新興住宅地を直撃した。

 

 益城町に入ると、役場に向かう車などで渋滞はいっそう激しくなった。幹線道路沿いでは、民家の屋根や壁が崩れ落ちているところも多く、この瓦礫が渋滞の要因にもなっている。役場まであと2キロの地点で車を降りて、そこからは徒歩だ。

 

 町に入ると、ほとんどの民家の屋根瓦の一部が、落ちたりずれたりしている。土塀に屋根瓦という古くからの民家の多くは、1階部分が押しつぶされていた。耐震構造になっていない古い民家は、震度7というすさまじい揺れにはひとたまりもなかったに違いない。

 

「町の中でも特に被害が大きいのは、安永地区だ。行ってみてよ。倒れかかっている家も多いから」

 

 知り合いの記者に教えられ向かうと、確かに倒壊したり傾いたりした家屋が何軒も連なっている。地震が横揺れだったためか、玄関の扉や窓枠がそのまま斜めになっている家も多い。

 

 ところが、その一角から道路1本隔てると、民家は少しも倒壊したり傾いたりしていない。もちろん、震度7という強烈な地震だったため、家の外観は何ともなくても、なかはあらゆる物が飛び散り、足の踏み場もないほど。住民のみなさんは片づけに追われていた。

 

 さらに一帯を歩いて回ると、甚大な被害を受けた家屋は直線状になっていることがわかってきた。どうやら断層の上にある家屋が地震の直撃を食らった可能性が高い。

 

 40年以上益城町に住んでいるという男性は、倒壊寸前の家屋の中でこう話してくれた。

 

「ここらへんに断層があることは前から知っていたよ。2年ぐらい前だったか、ちょっとした地震があった。そのとき、家の庭に亀裂が走ったんだ。10センチぐらいの段差もできたので、土を買ってきて埋めた。

 

 そうしたら今回の地震でまた同じところに亀裂ができた。こんなに大きな地震が起きるとわかっていたら、もっと対策を取っていたのにな。

 

 今回地震が起きたときは、阿蘇山が噴火したと思ったよ。ギシギシといったとたん、ドーンと大きな音がして、一瞬にして壁が落ちてきて、家具が倒れた。長い地震じゃなかった。家は築35年ぐらい。新興住宅地で建売の物件だったんだ。

 

 もうこの家には住めないな。もう一度ここで建て替えるかといえば、それはもう嫌かもしれない。とりあえず家から必要なものを取りに帰ってきたけど、すぐ避難所に行かなきゃならないんだ」

 

 家族6人で益城町で暮らす70代の男性は家の中を片付けながら話す。

 

「近くの山のふもとに断層があるということは知っていた。九州大学で調査していると言っていたし。でも、すぐ真下に断層があったんだな。しかもそれがこんなに大きな地震を引き起こす断層だったなんて、全然知らなかった。知っていたら何かやっていたよ。地震のときは本当に驚いたな。50センチくらい飛んだと思った」

 

 14日の地震の原因となったのは布田川断層帯と日奈久断層帯といわれている。じつは今年1月、文部科学省傘下の地震調査研究推進本が発表した資料によると、日奈久断層帯(八代海区間)の地震発生率は最大16%と全国で3番めの高さになっている。そのことを地元の住人は知っていたのだろうか。ある女性は驚いたようにこう話す。

 

「そうなんですか! そんなことは全然知りませんよ。もしそんなに危ない断層だったらちゃんと対応したかったです。地震は関東で起こるものだと思っていた。ここで地震が起きるなんて思ってもなかったから、対策なんて全然取っていませんでした」

 

 同じような反応を何人もの住人に聞いた。全国でもトップレベルの危ない断層があることを知っている住人はいなかった。

 

 益城町の取材を終え、15日夜に熊本市内中央区のホテルへ。深夜、部屋で原稿を書いていると、突然、ドドッとすごい音がして、椅子が浮き上がって投げ飛ばされた――。

 

(その2に続きます)

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