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川崎殺傷事件、被疑者死亡で「損害賠償ゼロ」の可能性

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2019.06.07 06:00 最終更新日:2019.06.07 09:33

川崎殺傷事件、被疑者死亡で「損害賠償ゼロ」の可能性

『カリタス小学校で開かれた会見』

 

 川崎市多摩区で、私立カリタス小学校の児童ら20人が被害にあった、通り魔殺傷事件。5月28日夜、カリタス小学校は会見を開き、齋藤哲郎理事長らが、怒りに声を震わせた。

 

 犯人は現場で自殺し、遺族、被害者にはやりきれない。元警察官僚で刑事事件に詳しい澤井康生弁護士が言う。

 

「被疑者死亡の場合、刑事裁判にかけるための要件がなくなり、起訴したとしても公訴棄却となるため(刑事訴訟法339条1項4号)、不起訴処分となります。被害者側は被疑者の親に、損害賠償請求をすることが可能です。

 

 損害賠償請求債務は金銭債務なので、相続の対象。ただし、債務の相続は放棄できるので、放棄されると損害賠償請求できません。実質的には難しいのです」

 

 これだけの事件で犯人は「不起訴」。さらに「損害賠償ゼロ」とは、遺族でなくとも怒りを覚える。そんななか、せめてもの「救い」がある。

 

 

 独立行政法人日本スポーツ振興センターでは、保育園、幼稚園、小、中、高、高等専修学校などの管理下で起きた災害に、災害共済給付をおこなっている。「加入率は96%」(センター担当者)という。

 

 被害者のひとりである小学6年生の栗林華子さん(11)は、通学中の災害と認められれば、死亡見舞金として1500万円が支払われる。

 

 一方、小山智史さん(39)は、外務省勤務の国家公務員。国家公務員災害補償制度により、通勤災害と認められれば、死亡した職員の平均給与額(1日分)、遺族の人数に応じて、各種補償金が支払われる。平均給与額が仮に1万3000円とすると、遺族補償年金は遺族3人の場合、年に約290万円が支給される。

 

 加害者側からの賠償金が支払われず、公的な補償も受けられない被害者側に対しては、国が給付金を支給する「犯罪被害給付制度」がある。窓口は、各都道府県警にある。

 

 同制度下の「遺族給付金」は、被害者が死亡した場合、遺族に支払われる。被害者の年齢、収入、生計をともにしていた遺族の数などにより算出される。神奈川県警の担当者が話す。

 

「一概には言えませんが、320万円くらいから1000万円くらいのケースが多いです。言うならば、『最後の砦』。ほかの公的給付、たとえば、労災や日本スポーツ振興センター、交通事故の自賠責などから給付された場合は、そちらが優先されます。

 

 小学生の通学時の災害であれば、スポーツ振興センターからの給付金のほうが金額は高い。その場合、犯罪被害者給付金は出ません」

 

 さて、今回のような悲劇を繰り返さないためには、何が必要なのだろうか。日本こどもの安全教育総合研究所の宮田美恵子理事長が言う。

 

「学校の先生にテロリストから児童を守らせるのは、役割を超えています。私立校の場合は、警備会社のガードマンをつけるべきです。公立校ならば、警察や警察OBの協力を、もっと積極的に要請する必要があると思います」

 

 あとは、家庭、地域、学校が一丸となって子供を守るしかない。

 

(週刊FLASH 2019年6月18日号)

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