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「軍艦」の製造は「商船」に比べてこんなに大変!

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2016.04.25 06:00 最終更新日:2016.04.25 06:00

「軍艦」の製造は「商船」に比べてこんなに大変!

護衛艦「いせ」(写真:海上自衛隊)

 

 熊本の大地震にも派遣された海上自衛隊の「ヘリ空母」(護衛艦)。その知られざる製造の秘密を、防衛ジャーナリストの桜林美佐氏が徹底取材した!

 


 

「商船と自衛隊の艦艇建造技術とは、まったく違うものだということもわかってもらえません」

 

 これは、どの造船所でも聞かれる言葉だ。見た目は民間船と同じ「船」にほかならないため、部品や道具などが流用できると思われがちだが、じつはすべてが別物だ。

 

 たとえば、艦船の鉄板の厚さは商船の半分以下である。私がいくつかの造船所を見て最も印象に残っているのは、あれだけ巨大な艦を造る作業が、数ミリ幅や1~2度の角度で曲げるといった極めてミクロな世界であったことだ。

 日中は気温によって鋼板に数センチのゆがみが出るといい、そうした微調整の技術が必須なのだ。

 

 艦艇の部品点数の多さも、一般商船とは比較にならない。きわめて狭い区画に無数の装備品や電線などが、ところ狭しと密集し、電線の艤装(ぎそう)密度は商船の約20倍といわれる。電線だけで関東から九州くらいまで伸ばせるほどだという。

 

 関連企業にはいわゆる町工場も多く、「親子3代、海軍時代から携わってきました」などという工場が少なくない。独自の技術を持っているケースがほとんどで、撤退されると、代わりを探すのは困難だ。  

 

 具体例をあげよう。

 

 東京・品川区にある大石電機は艦艇用の電気器具を製造しているが、同じ電球でも「艦艇用」となればすさまじい耐久性が要求される。「ハンマーで叩いても壊れない」ほどの丈夫さで、実際、そうした試験を繰り返しおこなっている。

 

 また、各種弁・こし器などを製造する福岡県の鷹取製作所は、戦時中に創業し、海軍時代から艦艇部品を手がける老舗だ。だが、自衛隊の仕事をこれ以上続けると経営危機になるからと、「やめさせてほしい」と訴えたことがある。しかし、撤退されると、ほかに担い手がいないため、各所から悲痛な声があがり、「継続」の決断をした。

 

 このように、日本の防衛産業を支える企業は、「自衛隊さんのために」という、親父さんの度量でもっている、要するに「浪花節」の世界なのだ。

 


 

桜林美佐 1970年、東京生まれ。テレビディレクターなどを経て、防衛ジャーナリストに。近著に『武器輸出だけでは防衛産業は守れない』『海をひらく - 知られざる掃海部隊 -(増補版)』 『自衛隊の経済学』ほか多数

 

(週刊FLASH 2013年9月24日号)

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