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香港200万人デモを圧殺した中国本土「超AI監視技術」

社会・政治 投稿日:2019.06.19 06:00FLASH編集部

香港200万人デモを圧殺した中国本土「超AI監視技術」

写真・The New York Times/Redux/アフロ

 

 香港から中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正に反対するデモは、最大で市民200万人近くが参加し、改正延期を勝ちとった。

 

 だが香港政府は、5000人以上の警官隊を投入し、催涙弾やゴム弾を市民に発砲。民間人に多くの負傷者が出て、2014年の民主化デモ「雨傘運動」以来の混乱となった。当時と違うのは、香港市民が中国本土の「超AI監視技術」を恐れていることだ。

 

 

 現地で取材するルポライターの安田峰俊氏は、こう指摘する。

 

「マスク、ヘルメット、ゴーグルなどで顔を隠している参加者が圧倒的に多い。顔認証システムで、個人を特定されたくないからです。今回のデモは、香港が中国本土のような『監視国家』にされることへの抗議でもあるのです」

 

 香港の民主化活動家の相林氏は、事態の悪化を危ぶむ。

 

「香港人が使わない北京語で会話する警察隊員が、多数いました。香港警察の制服を着た、本土の武装警察でしょう」

 

 香港市民が恐れるAI監視とは、どんなものなのか。中国本土では、2020年までに国家規模での情報蓄積体制を整備する計画が、すでに完成しつつある。その要を担うのが、AI搭載の「カメラ網」だ。

 

「『天網』というシステムでは、交差点で歩く人が誰か、瞬時に特定できる。信号無視をすると、その場で交差点の電光掲示板に身分証の番号が晒されるのです。

 

 さらに2018年から、外国人の入国時には、指紋認証が必須になりました。実際に尾行などしなくても、顔認証システムと連動させて、出国まで個人の行動を追跡できるのです」(前出・安田氏)

 

 AIの進化は、ウェブ上の監視網も強固なものにした。

 

「ウェブ検閲システム『金盾』の、『グレートファイアウォール』というフィルタリング網は、AIの進化でさらに精度を上げています。SNSの書き込みも、中国共産党や政府に批判的な内容ならば、即座にウェブ上から排除できるようになっています」(日本のセキュリティ企業関係者)

 

 2017年の中国の治安維持費は、日本円換算で約23兆円。国防費の約20兆円を優に超える。だがこれは、対岸の火事ではない。

 

 NECを筆頭に、日本企業が持つ顔認証技術は世界屈指。しかも、日本の最高検察庁が、約290社に及ぶ情報照会可能企業リストを持っていることが発覚している。

 

 プライバシー問題に詳しい、中央大学総合政策学部の宮下紘准教授はこう警鐘を鳴らす。

 

「リストには、交通系ICカード、クレジットカード、Tポイントなどのポイントカード、携帯のGPS情報を提供するオンラインゲーム会社などが並んでいます。

 

 問題は、裁判所の令状なしに、捜査機関がこれらの企業に照会をおこなえる点。顔認証技術と合わせれば、誰がいつ、何を買ったか、どこに行ったかなどの個人情報を、日本でも簡単に入手できるのです」

 

 これでは、自由を求める香港の200万人デモを“超AI監視” で圧殺する中国政府を、「独裁国家」と笑ってもいられない。すでに、事態は悪化しつつあるのだ。

 

 日本の情報機関である内閣情報調査室が、米国の国家安全保障局(NSA)と協力し、一般市民をも監視対象に含めていた事実を、元CIA職員のエドワード・スノーデン氏が暴露している。2018年5月、この事実をNHKスペシャル『日本の諜報』が報じた。番組は、首相官邸内で問題視されたという。

 

「放送後、政府のインテリジェンス部門を統括する杉田和博官房副長官が憤っていた。『これをやられちゃ、“諜報力”が落ちる』と。国民監視の手の内を明かされたらたまりませんからね」(官邸関係者)

 

 日本はすでに、共産主義国家並みの「監視社会」になりつつあるのだ。


(週刊FLASH 2019年7月2日号)

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