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テレビ・スポーツ中継これが原価だ(1)オリンピック編

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2016.05.02 15:00 最終更新日:2016.05.02 15:00

テレビ・スポーツ中継これが原価だ(1)オリンピック編

写真:AFLO

 

 「五輪やサッカーW杯の放映権交渉のたびに関係者は『これ以上は無理だ』と言っている。それでも毎回、前回を超える契約を結んできた。ある意味、限界はとっくに越えているんですよ」

 

 そう語るのはスポーツプロデューサーの杉山茂氏。長年NHKのスポーツ番組制作に携わり、放映権交渉を手がけてきた人物だ。

 

 スポーツ界最大のイベントである五輪の放映権料は高騰を続けている。来年に迫ったリオ五輪は昨年のソチ冬季五輪と合わせて360億円。東京五輪に至っては、2018年平昌五輪と合わせて660億円にもなる。

 

「東京は地元開催、平昌も時差がないということでここまでの額になった」(杉山氏、以下同)

 

 この交渉と契約をおこなうのはNHKと民放各社で組織されるジャパンコンソーシアム(JC)だ。

 

「1970年代前半、放映権料の負担を減らし、各局競合で金額が吊り上がることを防ぐためにNHKと民放が協力する仕組みが作られた。1980年モスクワ五輪はテレビ朝日が独占したが、その後はずっとJCの枠でやってきている」

 

 放映権料の負担割合は、かつてはNHKが80%に対し民放連が20%だったが、近年はNHK70%、民放連30%になっている。民放連ぶんはさらに在京各局で等しく分担する(テレビ東京のみ他局の半額負担)。

 

 JCを組織し放映権料を抑えようとしてきたにもかかわらず、ここまで高騰してきた原因は何か。

 

「明らかにアメリカですよ。アメリカの3大ネットワーク(NBC/CBS/ABC)にFOXも加わってド派手な競争をやる。“独占”でないと意味がない、というのがアメリカの放送文化。日本の互助会的なものとはまったく異なります。そのため信じられないほどの額になってしまう。それが一種の基準となってしまうため、日本の放映権料も上がってしまうわけです」

 

 近年、アメリカではNBCが放映権を維持しているが、それでも放映権料は上がり続けている。

 

 しかし、それももう限界に近づいていることは間違いない。2010年のバンクーバー冬季五輪でNBCは赤字を計上している。日本も、2012年のロンドン五輪は深夜の中継だったこともあり、広告収入が伸びず民放は赤字だった。

 

「もう五輪はいいのではないか、JCから抜けられないか、そんな声も最近はあるようです。もちろんスポーツ番組の制作現場はそんなことは言いません。おもに民放の営業や編成の部署です。基本、民放局の基準は儲かるか儲からないかですからね。

 

 ただ、五輪以上に儲かる番組がほかにあるかといえば、ないのも事実。かつては五輪期間中でも、日テレなら巨人戦、TBSなら『水戸黄門』を優先させた時代もあった。

 

 しかし今は全体的にテレビ視聴率が低下し、絶対的な人気番組もない。そうなると五輪をはじめとするスポーツに頼らざるをえないわけです」

 

 原価割れしても商売を続けなければならない事情があるのだ。

 

(FLASH+ 2015年12月5日増刊)

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