“天使みたいな子” の境遇が変わっていったのは、小学校に入ってからだった。
「小学校低学年のころに両親が離婚。本人は、父親についていった。中学校に進み、いじめに遭って転校。その後、埼玉県内の定時制高校に進んだようだ。父親はすでに亡くなっている」(社会部記者)
20代前半のころは埼玉県内のコンビニ店員や埼玉県文書課の非常勤職員など、職を転々としていた。勤務先をコンビニエンスストアとして契約した賃貸アパートのオーナーが、当時をこう振り返る。
「ふだんはおとなしい人でした。ところがある日、お巡りさんが来て逮捕していった。近所で窃盗を働いたというんですよ。驚きましたね」
さらに2012年6月20日には強盗事件まで起こした。
「茨城県内のコンビニに包丁を持って押し入り、店員から現金約2万円を奪って逃げた。その日のうちに自首し、強盗と銃刀法違反容疑で逮捕。コンビニ勤務の経験を悪用したんでしょう」(前出・社会部記者)
当時住んでいたのは、茨城県常総市内の団地だ。管理人は、その逮捕前にあった、ある “事件” について明かす。
「壁を『ドカン、ドカン』とやっている音が聞こえたんだけど、部屋の中は見られないでしょう?
強盗で捕まった後、留置場の本人から了解をもらって部屋に入った。ハンマーがポツンと置かれていて、それで壁が壊されていて。窓ガラスも割られていた。パソコンも画面が割られて、ぐちゃぐちゃだった。食器類はシンクに山積みになっていたよ」
理由なき暴力−−。その後、服役した青葉容疑者は、3年ほど前から埼玉県に戻り、2階建てのアパートで暮らしていた。そして、そこでもトラブルを起こしていた。隣室の住人は、その一部始終を語る。放火事件の4日前のことだ。
「今月14日のお昼に、上の階からドンドンという音がして。僕が出したと勘違いしたのか、隣の人(青葉容疑者)が、壁をドーンと叩いた後、僕の部屋のドアを叩いてきた。
ドアを開けて、違うと言おうとしたら、僕の胸倉を摑み、もう一方の手で髪を摑んできた。『殺すぞ! こっちは余裕がないんだよ!』と繰り返し凄まれました。
毎日のように、壁に響く音量でゲーム音楽のような音を鳴らすし、引っ越しを決めたところでした」
ほかの住人も青葉容疑者の異様な行動に困り果てていた。
「深夜に爆音で音楽をかけるので、何度も警察に通報しました。アパート前の自販機を壊したこともあります。でも、挨拶すれば返してくれるし、感じのいい人に見えるときもありましたが……」
青葉容疑者は、京アニに火を放つ際に、周到な準備をしていた。
「現場近くからはガソリン携行缶のものとみられる空き箱のほか、包丁数本やハンマーなどが見つかり、計画性が十分認められる」(社会部デスク)
一方的に狙われた京アニの八田英明社長は、本社近くで報道陣の取材に応じ、沈痛な面持ちで「本当に晴天の霹靂だ」と話した。
「断腸の思い。堪えきれない。作画や資料も一切合切すべて焼失した。アニメーションを志し、全国から集まった若者たちがこんな形で将来を閉ざされてしまったことが残念で、言葉にできません」
京アニに対しては、脅迫めいたメールなどが数年前から届いていた。しかし前出の津堅氏は、「アニメ監督がブログなどで、『脅迫を受けた』と発信しているのを見たことはありますが、会社として脅迫を受けたという話は聞いたことがない」と話す。
前出のアニメ関係者は、京アニの今後をこう憂えた。
「亡くなった方のなかには、著名なアニメーターもおられると聞いています。京アニの打撃は深刻です。アニメの制作は、アニメーター個人の技術に依るところが大きいもの。制作はおろか、京アニの経営悪化も避けられません」
いま、世界中のSNS上で、「#prayforkyoani(京アニに祈りを)」などとハッシュタグがつけられ、追悼の声が拡散中だ。青葉容疑者が奪ったものは、あまりにも多すぎる。
(週刊FLASH 2019年8月6日号)