社会・政治
「隠し資産」パナマ文書に登場する日本人「合法逃税」を語る
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2016.05.11 06:00 最終更新日:2016.05.11 06:00
「町内会で祭りをやっても、1円も寄付してくれたことがないよ。ときどき車の出入りするのを見るけど、近所づき合いはないですね」(近隣住民)
東京・世田谷区。土地・建物を合わせ20億円を下らない豪邸は、セコム創業者・飯田亮氏(83歳)の自宅だ。周囲を塀が囲み、何台もの監視カメラが目を光らせる。警備保障会社創業者の自宅らしい鉄壁のガード。そこに風穴を開けたのが、10日午前3時に完全公開された『パナマ文書』だった。パナマ文書とは、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した大量の内部文書のことだ。
完全公開に先駆け、租税回避の一端が報じられていた。1992年、飯田氏と共同創業者(故人)は、英領バージン諸島の会社の株主に就き、当時の取引価格で計700億円を超す大量のセコム株を管理していた、というのだ。
「一般論ですが、タックスヘイブン(租税回避地)には法人税も所得税もなく、税務申告も必要ない。つまり、会社を設立して個人資産を移し、社長の地位を相続させれば、課税なしに資産を継承できるのです」(海外金融取引に詳しいコンサルタント)
日本では、相続税55%、法人税30%(ともに最高税率)が課されるが、これがゼロになる。富裕層のみが利用可能な合法的「逃税」術だ。
完全公開された「パナマ文書」で名前が挙がった日本人は400人(重複含む)、270法人。大多数が海外取引のある企業や個人投資家だ。東南アジアで複数の病院を経営する日本人医師は「突然、朝日新聞の記者から電話があって驚いた」と明かす。
「カリブ海にある島に設立した商社に関する取材でした。じつは、海外にある私の病院が某途上国の病院向けに、薬剤を売却したことがあった。もちろん正当な取引ですよ。その売却代金を受け取ったのが、その商社。日本では医療法人が商行為をすると、税務手続きが煩雑になるから、海外に商社を設立しただけです」
2015年、関西で起きたある経済事件の“主犯”と名指しされた経営者も名前が挙がっていた。この経営者は、本誌の取材にこう答えた。
「確かに30億円と額は大きい。ですが、私がパナマの法律事務所に設立を依頼しただけ。東南アジアの開発事業に関連した資金で、出資者が複数います。利益を将来的に出資金に応じて分配するために設立した普通の商行為です。それだけですが、取材を受けると出資元に心配をさせてしまうので……」
他、文書に登場する複数の日本人に話を聞いたが、みな悪びれた様子はない。セコムは「日本の税務当局から求められた必要な情報を随時開示しており、合法的に処理されていると聞いております」(コーポレート広報部)。グループ最高経営責任者・上島郷太氏(47歳)の名前が挙がったUCCホールディングスは「日本の税務当局に求められた情報は随時開示し合法的に納税している。租税回避が目的ではない」との回答だった。
たしかに、タックスヘイブンに会社を設立するのは違法ではない。だが、タックスヘイブンのひとつであるケイマン諸島に、日本企業が保有している投資残高は年間約65兆円。もしここに日本の最高法人税率を適用できれば、約20兆円の税収となる。消費税8%をゼロにしてもおつりがくるのだ。
(週刊FLASH 2016年5月24日号)