「先ほど、大阪の○○組に車が突っ込んできました」
「栃木の事務所が金属バットで襲撃されました。今30人ぐらいが集まっています。返しでしょうか」
山口組と神戸山口組双方が関係しているとみられる抗争事件が、全国で続発している。本誌が確認できたものだけで、3月は30件近くにも及ぶ。車による事務所の破壊、拳銃発砲、火炎瓶投げ入れなど、抗争は激化している。
じつは現場のヤクザ同士で、LINEやメールを使って、こうした襲撃情報をリアルタイムで共有しているのだ。冒頭のような情報とともに、ヤクザ自身がスマホで撮影した写真や動画を添付して状況を伝えている。
共有されている情報のなかには「○○が刺されて病院に行った」というもの、さらには「宅急便でクソが送られてきた」というものもあった。
それがネット上に流出する場合も多い。ヤクザ界に詳しいジャーナリストはこう話す。
「2月に歌舞伎町襲撃事件の現場映像がネット上に流れ、逮捕者も出た。それが発端となって、山口組、神戸山口組双方ともネットを利用した情報戦に鎬(しのぎ)を削っている。不特定多数に、自分たちの力を誇示したり、相手の非道さを伝える狙いがある」
もっともこうした抗争状態を冷ややかな目で見るヤクザもいる。都内の山口組系のヤクザは言う。
「山口組と神戸山口組以外の組織からは『抗争事件といっても、トラックで突っ込んだり、壁に発砲するだけでは子供の遊びみたいなもの』といわれている。だが、俺らもシノギをしなければならないので、これ以上過激なことはできないのが現状だ」
前出のジャーナリストはこう語る。
「神戸山口組の主力団体である山健組からは、音を出すな(拳銃を使用するな)、光り物(刃物)を使うなという指令が出ている。相手を死に至らしめるようなことをやれば、上部の組織にも波及する。これ以上はヤバいと双方が考えている。本格的な抗争とはいえないが、これが限界だと思う」
抗争状態が長引いて、現場のヤクザには疲弊する者も現われている。30年以上現役のヤクザはこう吐露する。
「今はヤクザではメシが食えなくなってきている。抗争といっても、こんな状態だと情けないだけだ。以前はイケイケでやっていたけど、今の時代はたいしたこともできないので、やる気が失せてきた。もう足を洗おうと考えている。
ただ、ヤクザをやめた仲間は、覚醒剤を扱ったり、詐欺をやったりして、まともな仕事につけていない。俺はちゃんとした仕事を探したいと思う」
警察は、山口組と神戸山口組に対し「特定抗争指定暴力団」も視野に入れている。指定された場合、事務所使用を制限されるなど壊滅的な影響が出る。音なき抗争の果てにあるのは、双方の破滅だけだ。
(週刊FLASH 2016年4月12日号)