「韓国人旅行者を10数人も乗せ、いつも店内を賑わせていた貸し切りバスが、1台も来なくなりました。売り上げは大打撃を受けています……」
悲痛な叫び声を上げるのは、大分県別府市のショッピングセンター「ゆめタウン別府」の職員だ。
異変が始まったのは、7月初旬。日本が韓国への半導体材料の輸出管理を強化してから。韓国政府は対抗措置として、8月22日に「GSОMIA(軍事情報に関する包括的保全協定)」の破棄を決定。冷え切った日韓関係の影響は、まず韓国人旅行者の激減として現われた。
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「今まで大人気だった、『地獄めぐり』の団体バスツアーがなくなりました。市内には、宿泊客の7割を韓国人が占めるホテルも多くあるのに……」(別府市・ホテル経営者)というから事態は深刻だ。
写写丸が別府に向かうと、週末の昼にも関わらず、温泉街には人通りがない。地元商店からは、体感で来店客が半減したという声が多数。売り上げの減少額は、算出中という店がほとんどだった。
九州は地理的な近さから、多数の韓国人旅行客が訪れる。2019年3月に国土交通省が発表したデータでは、2018年1年間に、九州を訪れた外国人観光客の、約半数は韓国人だ。たとえば、中心都市のひとつである福岡・天神の免税店や土産物店では、韓国人旅行客が占める割合の多寡が明暗を分けている状況だという。
そしていま、韓国が目と鼻の先にある最前線で “泣かされている” のは長崎県対馬市。
「対馬南部の厳原港は、韓国・釜山との連絡船の運航を8月半ばから運休しています。年間10万人が、厳原港から入国していたのですが……」
こう語るのは、対馬観光物産協会の担当者。連絡船は、片道約2時間で韓国と日本を行き来することができる。船が来なければ客も来ない。50以上の客室を持つ観光ホテルの嘆きは止まらない。
「現在、韓国人の宿泊客はゼロです。7月ごろから団体客のキャンセルが増え、8月からは韓国からの予約自体がなくなりました。この数年ほぼ満室だったのですが、現在は7割が空室。半年間は回復しないだろうと覚悟しています」
港では、打撃を受けた観光ホテルに魚を卸す漁業関係者にも影響が出ているという。一方、対馬のタクシー運転手は、韓国人旅行者たちの本音を知っている。
「ある韓国人のお客さんが教えてくれました。彼らも、本当は対馬に来たいんです。片道数千円で、海外に行けるわけですから。でもまわりの目を気にしてやめています」
“周囲の目” が気になるのは、日本いちのコリアンタウン、東京・新大久保でも同じようだ。
「いまのところ商売に影響はありませんよ。ただ、政治の話は街全体でタブーになりつつあります」(コスメ店スタッフ)
意外な形で、売り上げを落とした店舗もある。
「韓流アイドルファン向けのグッズショップなので、もともと日本人客のほうが多く、韓国人客が減っても影響はないはずでした。しかし、GSOMIAに関するニュースが流れてから、日本人の客まで3分の1に減ってしまいました」(グッズショップ定員)
写写丸が新大久保に足を運ぶと、金曜日の夜にもかかわらず、メインストリートは閑散としていた。「日本人客が相手なので影響なし」という回答もある一方、取材拒否の店舗も多い。
いつまで受難は続くのか。別府からは、恨み節も聞こえてきた。
「台湾や中国の観光客を呼び込もうと、対策している最中です。でも、安倍さんは『観光立国』を訴えていましたよね。まさにその安倍さんが『観光業』を壊しているんですよ」(別府市・温泉施設経営者)
悲嘆の声が怒声に変わる日も近いか。
(週刊FLASH 2019年9月17日号)