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サウジ石油施設を攻撃した「ドローン」最新機なら1500km飛行可能
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2019.09.20 11:00 最終更新日:2019.09.21 12:29
9月14日、サウジアラビアのリヤド近郊にある石油施設が、イエメンのフーシ派から攻撃を受けた。フーシ派は「10機のドローンで攻撃した」との犯行声明を出している。ドローン攻撃によって、サウジアラビアは原油生産能力が半分になってしまった。
一方、18日にはサウジアラビア国防相が、フーシ派の背後にイランの関与があったとして、攻撃に使用されたとされるイラン製の巡行ミサイルやドローンの残骸を公開した。
今回使用されたドローンについて、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は「形状としてはデルタ(三角)翼タイプだが、フーシ派が従来使っていたものとは違う新しいドローンである可能性が高い」と話す。フーシ派はこれまで主に飛行距離150kmほどのドローンを使用してきたが、最近のドローンは1500km飛行できるものもあるという。
フーシ派はここ数年、ドローンだけでなく巡航ミサイルによる攻撃も並行して行なっている。ただし、巡航ミサイルは民生品がなく、手に入れることが難しい。片やドローンは安い民生品が多く、コストを低く抑えることができる。
とはいえ、攻撃の威力となると話は別で、そもそもドローンは大量の爆弾を積めないため、巡航ミサイルに比べれば圧倒的に破壊力が劣る。黒井氏は「ドローン攻撃はあくまで巡航ミサイルの代用品。駆逐艦や空母を撃沈することはできず、ミサイルを手に入れられない集団が、テロや破壊工作に使用する程度」(黒井氏)と解説する。
レーダーに映らないため、ドローン攻撃は防ぎにくいとの報道もあるが、黒井氏は「低空でレーダーをかいくぐるのは巡航ミサイルも同じで、むしろドローンよりスピードが速く、撃ち落としにくい。一般的には、発見された場合、防ぐのが簡単なのはスピードが遅いドローンの方だ」と指摘する。
ドローンには、今回の石油施設攻撃で使用された「自爆型ドローン」と、アメリカ軍がアフガニスタンなどで使用している「偵察型ドローン」、それにロケット砲などを積んだ「攻撃型ドローン」がある。「攻撃型ドローン」は、敵を探して追跡し、攻撃を加えて帰還することが可能だ。
黒井氏は、今後、攻撃型ドローンが戦争の主役になるのは間違いないと話す。
「ドローンなら、たとえ地対空ミサイルで撃ち落とされても兵士の人的被害が出ない。いまは兵士が遠いアメリカ本土の基地から遠隔操縦していますが、AI導入などで自律行動するタイプの研究も主要国で進められています。いわば戦闘機のロボット化で、『殺す側が死なない戦争』に変わりつつある」
ドローンの進化は、戦争の形態すら変えてしまうのかもしれない。