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起源は帝国陸軍に…「旭日旗」をめぐる対立はどうなるの?

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2019.10.09 11:00 最終更新日:2019.10.18 17:38

起源は帝国陸軍に…「旭日旗」をめぐる対立はどうなるの?

写真・YONHAP NEWS/アフロ

 

「メダルデザインが、旭日旗に似ていることでショックを受けた。速やかな対応を求める」

 

 9月12日、東京パラリンピックのメダルのデザインについて、韓国選手団が大会組織委員会に抗議したことが明らかになった。韓国、中国からしばしば寄せられる、旭日旗への抗議である。

 

 2013年にソウルでおこなわれたサッカー東アジア杯の日韓戦では、日本サポーターが旭日旗を振り、大会の懲罰委員会に「差別的行為」だと認定された。

 

 

 一方、開催中のラグビーW杯日本大会。9月20日におこなわれた日本VS.ロシア戦では、堂々と旭日旗が掲げられているではないか。「多くの外国人が、旭日旗を身につけている」とツイッターで主張する人も。

 

 組織委員会に聞くと、こう回答があった。

 

「政治的、宗教的、人種差別的なメッセージがある横断幕、看板などの持ち込みは規約で禁止されていますが、旭日旗はあてはまらないと判断しています。持ち込みに制約はありません」

 

 2020年開催の東京五輪でも、「持ち込み禁止品とすることは想定していない」方針で、韓国は猛反発している。このように政治問題化する旭日旗。いったい、どこが “アカン” のだろうか。

 

 旭日旗は明治3年、陸軍が「陸軍御国旗」として使用したことが始まりとされる。日本旗章学協会の事務局担当者が解説する。

 

「明治6年には陸軍卿・山縣有朋が提案し、旭日旗が帝国陸軍の軍旗となりました。天皇から親授された軍旗は、天皇の分身。軍旗についた傷は、聯隊(連隊)の名誉となり、補修や交換がされることはなく、敵側に軍旗が奪われることは『恥辱』とされました」

 

 そして明治25年には、帝国海軍の軍艦旗となり、艦艇にも掲揚された。

 

「戦後、軍旗はGHQによって使用を禁じられますが、自衛隊創設にあたり、再び採用されました。自衛隊内部では、復活させるか否かの、侃侃諤諤の議論があったようですが、当時は旭日旗への思い入れが並々ならない、旧帝国海軍の力が強かったのです」(同前)

 

 韓国、中国が旭日旗を批判するのは、このように軍旗として使用されていた経緯があるからだ。旭日旗は現在、陸上、海上両自衛隊が使用。2018年、安倍晋三首相の観閲式でも掲げられた。

 

 批判を受けて外務省は5月、ホームページに旭日旗に関する説明文を掲載した。「旭日旗の意匠は、大漁旗や出産、節句の祝いなど、日常生活の様々な場面で使われている」という。

 

 しかし、前出の日本旗章学協会の担当者は、外務省のHPの記述について、こう指摘する。

 

「本来の旭日旗は、縦横の長さが同じほぼ正方形ですが、外務省のHPは横長になっています」

 

 ところで、朝日新聞は、旭日旗をスポーツの現場などに持ち込むことを否定している(9月24日付・デジタル版記事など)が、同社の社旗も旭日旗そっくりだ。なぜなのか。

 

「明治12年の創刊時から、事件や火事の現場を取材する際の目印として、水平線上に半体をあらわして光を放つ朝日の中に『朝』の字を白抜きにした社章入りの提灯を使っていました。

 

 明治21年に東京朝日新聞を創刊後、その社章を左右に分割した社旗を使うようになり、現在では向かって右側を東京本社と北海道支社、左側を大阪、西部、名古屋の各本社で使用しています」(朝日新聞社広報部)

 

 諸団体や諸外国から批判されたりすることは「特に承知しておりません」という。ただ、歴史家の秦郁彦氏は「朝日新聞ソウル支局では、社旗を掲げていないと報じられています」と語る。

 

 やはり、公の場で掲げることはやめたほうがいいのか。スポーツライターの杉山茂樹氏が語る。

 

「2013年のサッカー日韓戦では、確信犯的に持ち込んだのでしょうが、たいへん危険な行為です。スタジアムは閉鎖された空間ですので、エキサイトした相手サポーターに囲まれたら、不測の事態になることもあります」

 

 2019年8月、ソウルの日本大使館前でおこなわれた反日集会では、参加者によって旭日旗が破られた。東京オリンピックまであと1年を切り、旭日旗をめぐる対立は解消されるのか。

 

「難しいでしょう。慰安婦問題のように韓国政府の主導ではなく、選手団など民間人がおこなっていることだから、日本のマスコミはキャンペーンを張りづらいのです。日本政府も正面衝突を避け、腫れ物にさわるようです」(秦氏)

 

 スポーツと政治の境界は、旗の紅白の光線のようには、はっきりと分けられないようだ。

 


(週刊FLASH 2019年10月15日号)

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