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佐藤優「崖っぷち『文在寅』はガン無視すればコケる」

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2019.10.27 06:00 最終更新日:2019.10.27 06:00

佐藤優「崖っぷち『文在寅』はガン無視すればコケる」

 

 混迷深まる日韓関係、接近する米朝……日本を取り巻く国際関係は、複雑さを増すばかりだ。いったい日本は、これからどうすればいいのか。元外務省主任分析官・佐藤優氏の特別寄稿!

 

 

「文在寅を、大統領の座から引きずり下ろす!」
 10月3日、大統領官邸のあるソウル・青瓦台(チョンワデ)周辺を、人の波が埋め尽くした。主催者発表で「300万人が参加した」というデモは、政権崩壊の時限爆弾に火をつけた。

 

 

 その直後の10月14日、文大統領の最側近、“タマネギ男” こと曹国(チョグク)法相が、親族の不正疑惑を受けて電撃辞任。

 

 10月22日には、天皇陛下の即位の礼に参列するため、「知日派」といわれる李洛淵(イナギョン)首相が来日した。しかし、李首相が訪日しても、韓国の対日感情がよくなるわけではない。

 

 また、李首相がGSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄を撤回しても、日本は韓国を、貿易上の優遇対象国「ホワイト国」に復帰させることはない。これらの動きは、日韓関係にとって、ごく小さな変数にすぎないのだ。

 

 一方、曹国法相辞任の影響は計り知れない。文大統領の権力基盤の弱体化が可視化されたからだ。2020年4月の総選挙を控えて、ますます「反日」を強めざるを得なくなる。仮に文政権が倒れても、親日政権が生まれることはない。それは、構造的な問題だからだ。

 

 2019年7月、日本は韓国向けのハイテク素材3品目の輸出管理を厳格化し、8月には「ホワイト国」のリストから韓国を外した。
安倍政権は否定しているが、これは、すでに決着済みの元徴用工問題を、韓国が蒸し返したことへの明らかな報復だった。

 

 日本のこの対応は間違っていない。日本は売られたケンカを買っただけだ。あとは、“ガン無視” を決め込むことにした。

 

 8月15日、日本の植民地支配からの解放を祝う「光復節」の演説で、文大統領は「日本が対話と協力の道に出れば、喜んで手を握る」と歩み寄ったが、日本はこれも無視した。

 

 韓国は対抗して、8月22日にGSOMIAの破棄を決めたが、日米韓の安全保障上の協定を破棄したことにより、米国防省は「強い懸念と失望」を表明した。

 

 私は、韓国にGSOMIA破棄という引き金を引かせるため、日本側は “ガン無視” のカードを切ったと読んでいる。そして文在寅政権は、日本の狙いどおりアメリカの信頼を失い、“自爆” したのだ。日韓のバトルは、短期的にはこうして日本が完勝した。

 

 だが、中長期的にも日本が優勢とは言い切れない。日韓関係がここまで悪化した背景には、北東アジアにおける地政学的変動という、無視できない要因があるからだ。

 

 地政学では、世界は中国やロシアのような大陸国家と、日本やイギリス、アメリカなどの海洋国家に分けられる。大陸国家は軍事力を背景に領土を拡張してきた。海洋国家は、おもに経済力を背景に国力の増強を図ってきた。韓国のような半島国家は、大陸国家と海洋国家の要素を併せ持つ。

 

 ただし、韓国には特殊な要因があった。朝鮮戦争停戦後、北緯38度線に軍事境界線が設けられ、その結果、韓国は大陸から切り離され、地政学的には「島」になった。そして、同じ海洋国家である日米とともに貿易立国の道を選んだ。

 

 その構図が大きく変わったのが、2018年6月12日におこなわれたシンガポールでの米朝首脳会談だった。会談によって近未来に朝鮮戦争が終結し、北緯38度線が撤廃される見通しが出てきた。

 

 韓国は、地政学的に本来の半島国家に回帰しつつある。そうなれば、韓国は大陸の中国に引き寄せられ、韓国、中国、北朝鮮が連携し、日本と対峙する構図が生じる。韓国が、日本ばかりか、GSOMIA破棄でアメリカにまで対抗できると考えたのは、中国の勢力圏に吸い込まれるからだ。

 

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