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宮崎学×寺澤有「グリコ・森永事件『キツネ目の男』の正体」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2019.11.17 20:00 最終更新日:2019.11.17 20:00
世の中の裏を見続けてきた作家・宮崎学氏とジャーナリスト・寺澤有氏の2人が、自身が関わった事件の真相を、初めて明かす!
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寺澤「宮崎さんが、自伝的ノンフィクション『突破者』を書いて世に出る前、1994年の年末ごろに、東京の全日空ホテルで会ったのが、僕と宮崎さんの最初の出会いでしたね」
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宮崎「寺澤と大谷(昭宏=ジャーナリスト)が話をしているところに、偶然、俺が出くわしたんだったかな」
寺澤「少し話をしただけで、すぐに宮崎さんは行ってしまいましたが、『ずいぶん頭がよさそうな人ですね』と、大谷さんに言ったんです。そうしたら、大谷さんから『そうだよ。あいつは、いろいろな “事件” をやってきた男だ』と言われて。
その2年後、宮崎さんは『突破者』で文壇を席巻したわけですが、僕は『この人は、こんなに表に出てきて大丈夫なのか』と驚きました。その後、大きな事件が起きるたびに、その裏側で動いていた宮崎さんの存在にも気づきました」
自らが関わった日本社会の “裏側” を赤裸々に記し、1996年に15万部のベストセラーとなった『突破者』の出版後、宮崎氏は作家として、マスコミの寵児になった。
あわせて、宮崎氏の代名詞となったのが、「キツネ目の男」というフレーズだ。1984年から1985年にかけて起きた、「グリコ・森永事件」で、犯人グループの一員と断定された、「キツネ目の男」の似顔絵は、当時、街中に貼られていた。
宮崎氏が、“キツネ目の男” と呼ばれた理由は、冒頭の似顔絵と写真の比較画像を見てもらえば、一目瞭然だろう。実際に事件当時、宮崎氏はグリコ・森永事件の容疑者として、警察から事情聴取もされた。
寺澤「社会の裏側を見続けてきた宮崎さんに聞きたいんですが、いま、芸能界と反社会的勢力の関係が批判されています。宮崎さんは、どう見ていますか?」
宮崎「反社会的勢力から見て、芸能人とつき合うメリットなんてないんです。逆に、芸能人を酒席に呼べば、小遣いをやらなくてはいけないわ、酒代も出さなくてはいけないわ、デメリットのほうが大きい。ただ、いいカッコはできる。それだけの話なんです。
芸能人とヤクザの関係は、江戸時代から深いものだけれど、これがテレビの時代になって、『コンプライアンス』とか言い始めて、テレビのほうが変わっただけ。裏切ったのは、テレビのほうですよ。
ヤクザと関係がある芸能人自身が、犯罪を犯しているわけではないでしょう。それをここまでヒステリックに叩くのは、異常です。
真面目くさった『僕は道路は右側しか歩きません』なんて芸能人、おもしろくもなんともない。芸能人がちょっと脱線するのをギャーギャー言う、いまの世の中が嫌だね」
寺澤「その一方で、僕自身が取材してすべて裏も取りましたが、福島第一原発の事故処理や、沖縄・辺野古の埋め立てなどには、全部、反社会的勢力が入っています。芸能人叩きはもういいから、なぜマスコミはこっちの問題をやらないのかと」
宮崎「いまのメディア状況では、反社会的勢力ということなら、絶好の叩く材料になってしまっている。相手に『反社』というレッテルを貼れば、得点を挙げられる世の中なんです」
寺澤「ところが、相手が権力となると、メディアは一気に腰が引けます。僕とジャーナリストの山岡俊介さんでずっと取材してきた、『安倍晋三宅放火未遂』という事件があります。取材のなかで、ここでも宮崎さんの名前が出てきて驚いたのですが(笑)」
宮崎「あれはね、ちょっと頼まれて動いたんだけど、返事がなかったから、それでやめたんだよね」
寺澤「1999年に、小山佐市という男が、安倍晋三宅に火炎瓶を投げて、2003年に捕まったんです。
1999年に下関市長選挙があり、小山は安倍側から頼まれて、当時、安倍さんのライバルだった政治家の中傷ビラを撒いたりして、選挙運動を妨害したのですが、安倍側は約束した見返りを実行しなかった。
怒った小山が、何度も安倍さんの自宅に火炎瓶を投げたのですが、処理に困った安倍さんは、当時、反社会的勢力である小山と1対1で会って話をしたうえで、“公共工事などで便宜をはかる” 旨の念書まで作ったんです」
宮崎「そうだな」
寺澤「この事件は、共同通信が、当初より取材に動いていました。しかし共同通信は、第1次安倍内閣のときに、安倍首相が反社と交わしたこの書面の1枚を入手して裏取りも終えて、予定稿まで作りましたが、上層部の判断で記事にせず、闇に葬ってしまいました」
宮崎「大手メディアの劣化も、ひどいもんだね。我々は、“表現の自由” が妨害されるというのは、そうした権力によって潰されることを想定してきたわけだけれど、いまはさらに世の中の空気で、真綿で首を絞められるように、表現の自由がなくなっている面もある」
寺澤「それは本当にひどくて、山口組が3つに分裂しているじゃないですか。そのひとつの組の最高幹部から『本を出したい』という話があったんです。
でも、いまの状況だと、どこの出版社からも出せないんです。現役のヤクザの幹部がいま何を考えているのか、発表できる場がない」
宮崎「どんどん来てるよね」
寺澤「宮崎さんと私は、1999年に盗聴法案が国会に提出されたとき、『こんなものを通したら、次から次へヤバい法律が通ってしまう』ということで、一緒に反対運動を盛り上げました。
立憲民主党の枝野幸男さんとか辻元清美さん、社民党の福島瑞穂さんとか、みんな本当に頑張っていたんですが、いまは本当にしょぼくれてしまった。なんで、こんなダメになってしまったんでしょうか」
宮崎「絶望的な話をしなければいけないんだけど、『この国の国民がバカなんだ』と思います。
その後の共謀罪の創設も同じだけど、本当は自分自身にも降りかかってくる話なのに、『悪いヤツをやっつけるためなら、何をしてもいいんだ』という、単純かつわかりやすいロジックしか考えられない国民になってしまっている。
国民がバカだから、安倍なんかを選んでいる。まあ、こんなこと言っても、載せてもらえないんだろうけどね」
寺澤「いや、今回は載りますよ(笑)」
宮崎「『警察から盗聴されるヤツなんて、どうせ後ろめたいことやってるんでしょ』なんていう、バカな常識が蔓延している社会だから、権力にとってはやりやすい世の中になっていると思う」
寺澤「先に挙げた、安倍さんと反社のつながりとか、僕は去年、記事にして発表しましたが、マスコミは報じない。せっかくSNSでは盛り上がっているのに、知り合いの共同通信の記者たちに『記事にしろ』と言っても、みんなゴニョゴニョ言って、いまだに握りつぶしたままです」