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留学生「タダ働き3カ月」Uberジャパン絶望の現場
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2019.11.18 06:00 最終更新日:2019.11.18 06:00
「アルバイトなんて名ばかりで、平成ハイヤーでは、日報整理やETCの精算業務、ハイヤーの洗車に加えて、ほかの留学生アルバイトを集めることまでやらされていました。なのに、3月から5月は賃金すらもらっていません」
そう訴えるのは、ウズベキスタン人留学生のAさん(30代)だ。彼が働く「平成ハイヤー」は、「UberJapan」から委託され、配車サービス「Uber」にハイヤーを提供しているタクシー会社だ。
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11月6日、この平成ハイヤーの会長・中澤和彦容疑者 (59)ら5人が、入管難民法違反容疑で北海道警に逮捕された。同社が旭川市で経営する、日本語学校に通うベトナム人留学生2人に仕事を斡旋して、法定時間を超える長時間労働をさせていた容疑だ。
世界的にシェアを拡大するUber。その日本法人がハイヤー業務を委託する企業が、摘発されただけでも驚きだ。そのうえ平成ハイヤーは、「Uberのハイヤー業務でも、留学生たちをこき使っていた」と、Aさんは告発する。
もともと、ウズベキスタンの大学で日本語講師だったAさんは、2015年に留学生として来日し、現在は国立大学の博士課程に通う。学業のかたわら、平成ハイヤーで2018年8月からアルバイトを始めたという。
「次第に『大学には行かずに、こちらの仕事に専念しろ』と言われるようになりました。安く使える留学生を募集するために、『ウズベキスタンに支社を作れ。だが、その費用は自分で稼げ』『洗車業務のアルバイトは自分で集めろ』などと、無理難題を押しつけてきたのです」
やむなくウズベキスタン人やタジキスタン人、ネパール人留学生ら10人ほどで洗車業務を続けていたが、Uberハイヤーで稼働している数十台のハイヤーすべてを洗車するのは、かなりの重労働だった。
Aさんも大学を休み、働きに行かされた労働時間が週28時間を超える、違法労働になる留学生もおり、しかも賃金は一部しか払われなかったという。
「留学生たちは、タダ働きの文句を、いちばん先輩格の私に言ってきました」
困ったAさんは、ウズベキスタン大使館を頼った。
「相談を受けて、大使館として平成ハイヤーの関係者を2回呼び出し、オーバーワークさせないことと、賃金を全額払うよう、注意しました」(ウズベキスタン大使館)
逮捕される前の2019年8月、中澤会長に電話で話を聞いた。
「Aが嘘をついているんです。騙されたのはこちらです。Aが勝手に人を集めてやっていたこと。給料の未払いもありませんよ」
Aさんの代理人を務めるフェアネス法律事務所の遠藤直哉弁護士は、怒りを表わす。
「平成ハイヤーは、払うべき賃金すら払わないうえに、『Aさんへの立替金』だとして、250万円を超える返還請求訴訟まで起こしてきました。事実無根で、明らかに嫌がらせ目的。反訴して徹底的に闘います。今回、道警が会長を逮捕したことは、大きな意味を持つでしょう」
一方、UberJapanに話を聞くと、「ドライバー、従業員さまへの指導は、パートナー会社さまに一任しております」と、“無関係” を強調するばかりだった。
世界規模で利益を上げるUberだが、それが現場の労働者の犠牲の上に成り立っていることに、向き合うつもりはないのか。
(週刊FLASH 2019年11月26日号)