「これで和解の目はなくなった」
関東在住の暴力団組員はこう語った。
5月31日、神戸山口組直参組織の池田組高木忠若頭(55)が銃撃された。午前10時ごろ、岡山市内の自宅マンションから迎えの車に乗るため出たところを、胸や腹に4発の銃弾を受け死亡。死因は心臓損傷だった。
銃撃後、フルフェイスのヘルメットを被っていた犯人と見られる男が小型バイクで逃走。5日、六代目山口組傘下の暴力団員山本英之容疑者(32)が出頭し、殺人と銃刀法違反の疑いで逮捕された。
「組事務所への発砲は何度かあったが、今回は直参団体の幹部の射殺だ。神戸側は報復せねばならない」(東京の老舗組織構成員)
六代目山口組と神戸山口組の分裂抗争が始まって早10カ月。警察の警備が厳しくなっていたサミット期間中は“休戦”していたものの、サミットが閉幕した矢先の射殺事件。
じつはサミット期間中、水面下では六代目山口組と神戸山口組の間で、密かに和解交渉が進められていた。
5月下旬、六代目山口組司忍組長が上京したという情報が流れた。その翌日、関東の指定暴力団トップの自宅を六代目側の幹部2人が訪問し、六代目山口組と神戸山口組の和解の仲介を依頼したというのだ。
「和解の内容は、六代目山口組の司忍組長が山口組総裁になり、ナンバー2の高山清司若頭は引退。その代わり神戸山口組の井上邦雄組長が、山口組若頭として戻るという案だ。しばらく七代目組長は空席にするという」(前出の暴力団組員)
一方、ヤクザ界に詳しいジャーナリストはこう話す。
「和解案があったことは聞いている。両団体とも本音ではドンパチなどやりたくない。ただ、高山若頭は引退し、井上組長が若頭で戻るということはありえない。破門状まで出した六代目の体面が保てなくなる。まずは真剣に話し合う場を設ける、という機運を作ったということだろう」
だが、射殺事件で事態は一変。サミット休戦が終わり、和解への動きが止まったことで、抗争の緊張は両団体ともに高まっている。さらに、六代目側が神戸側の幹部を暗殺する計画があったと語るのは、大阪在住の暴力団関係者だ。
「ただ、トップを殺ると、抗争終結の交渉ができなくなるので、六代目側は井上組長を狙わない。むしろ、組長に準ずる大幹部クラスや、陣頭指揮をとる若手幹部などを狙うだろう」(前出・暴力団関係者)
警視庁組織犯罪対策四課の関係者はこう明かす。
「現在は、両団体がともに『自分たちこそ和解案を蹴った』と主張している。そもそも神戸側は、分裂の責任は司六代目にあると主張してきた。その責任問題を棚上げにしたままで和解をすることはない。一方、六代目側は盃事を無視して離脱した神戸側のケジメなしの和解はありえない。お互いに妥協できない部分だ。最初から和解は無理な話だった」
サミット休戦を経て、「第2幕」が切って落とされた。
(週刊FLASH2016年6月21日号)