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死に体となった「舛添都知事」に贈る一発逆転の秘策

社会・政治 投稿日:2016.06.10 14:57FLASH編集部

死に体となった「舛添都知事」に贈る一発逆転の秘策

空転が続く東京都議会

 

 大阪観光大学観光学研究所客員研究員の濱田浩一郎氏が、進退窮まった舛添都知事に、起死回生の秘策を伝授する。


 

 

「違法ではないが、一部不適切――」

 舛添要一都知事は、6月6日、弁護士2人と記者会見し、政治資金の私的流用疑惑に関する調査報告書を公表した。会見では、ほとんどの疑惑が「合法」として片付けられ、弁護士が連発した「違法性はないが、一部は不適切」という言葉は、ネットで流行語となった。

 

 私も、調査報告書を全文読んでみた。ヤフオクで買った大量の絵画や子供と泊まったホテル代など、大きなテーマは他でいくらでも取り上げられているので、ここでは触れない。私が感心したのは、舛添氏が政治資金で購入した大量の書籍リストだった。

 

 実は、60ページを超える報告書のうち、20ページ以上が書籍リストなのだ。そのなかには、すでに報道されているとおり、『クレヨンしんちゃん 北与野博士編』『ひっかけクイズ最強イジワル王への挑戦』など、明らかに子ども向けの本もあるが、実際のところ、それらはわずかだ。

 

 膨大すぎてリストの内容を列挙しても意味はないが、『芥川龍之介俳句集』『ゴッホの宇宙』『史観宰相論』『安部英医師「薬害エイズ」事件の真実』『川と国土の危機』『なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか』……などなど社会事象から歴史、芸術、技術、経済まで、さまざまな本を買っている。

 

 舛添氏は、アルバイト職員として図書館の元司書を雇い、購入した本に分類番号を付けた上で、蔵書目録を作成しているという。もともと学者だっただけに、本当に本好きで、きちんと勉強しているような印象だ。そのことは、ちゃんと指摘しておきたいと思う。

 

 目につく本をあげると、『独裁者のためのハンドブック』という本があった。ほかに、『ビルマの独裁者タンシュエ』『独裁者プーチン』と、独裁がらみの本が3冊ある。

 

 しかし、『独裁者のためのハンドブック』は、小国だったシンガポールを一等国に育て上げたリー・クアンユー首相を独裁の成功例としてあげるなど、権力構造の推移を研究したものだ。けっして「逆らう奴は皆殺し」などといった暴君マニュアルではない。

 

『原色金魚図鑑』『楽しい金魚の飼い方』も気になるが、これは事務所で金魚を購入したことで買った本だそうだ。『ピザ釜・パン釜の作り方』『江戸流そば打ち』は、ピザやそばを振る舞いながら支援者から話を聞いたから問題ないということらしい。

 

 報告書では、こうした本の購入に政治資金を使うことは避けるべきだったとしているが、やはり「違法とは言えない」と開き直っている。

 

 東京都議会では、舛添氏の責任問題を追及しようと頑張っているが、法的に問題がないならば、舛添氏が自発的にやめるのを待つしかない。しかし、辞任するとは思えないので、このまま議会の空転が続くだろう。問題が山積みのこの時代に、時間もお金も本当に無駄な事態だ。

 

 では、いったいどうすればいいのか。余計なお世話を承知で、今回も歴史上の人物に打開策を学びたい。

 

 仙石秀久(1552~1614)という豊臣秀吉に仕えた武将がいる。秀久は順調に出世するが、九州征伐(1586)で、秀吉の命令を無視して島津軍に攻勢をかけ大失敗。長宗我部信親ら味方の武将を失ったばかりか、本人も四国に逃げ帰る体たらくで、秀吉は激怒。所領を召し上げ、高野山に追放した。本来なら切腹ものの失敗だが、秀久は運良く命拾いした。

 

 秀久は拾った命を有効に使う。1590年、秀吉が北条氏の小田原を攻めた際、鈴を一面につけた日の丸の陣羽織を着用、紺地に「無」の字を白く出した馬印を押し立てるという、ド派手で目立つ姿で参陣。小田原城の要所を占領し、功績を立てた。このパフォーマンスと手柄で、みごと大名に返り咲く。

 

 舛添氏は、議会の追及を逃げ切ったところで、世論の信用や支持を取り戻すことは出来まい。

 

 だったら、「自分はリオ五輪が終わる9月に辞任する」と宣言してはどうか。リオでは、次期開催都市の首長として五輪旗を受け取る大セレモニーが待っている。当然、世界中のテレビが放送するだろう。

 

 このとき、秀久がやったように、鈴をつけた日の丸の陣羽織のようなド派手な衣装で日本をアピールしてみたらどうか(もちろん、一歩間違えれば、ただの目立ちたがり、品がない、恥知らずと総スカンをくらうだろうが)。

 

 リオ五輪では、東京を紹介するプレゼンも待っている。

 

 本人は会見で「隅田川から東京湾にかけてのすばらしい景色は見てもらってもいい。渋谷のスクランブル交差点が世界中の人から見て東京のシンボルになっており、お見せできるようなものを総力をあげてつくっていく」と語っている。

 

 がしかし、これでは完全に想定内の地味な映像になる。もっと想定外の、ド派手なものを作って、やはり世界中をあっと驚かせられないか。

 

 世界中のメディアが「マスゾエはすごい」と報道すれば、間違いなく支持率は上がる。帰国後、選挙でふたたび都知事に選ばれることは十分ありえる話だろう。

 

 とはいえ、舛添氏にそんな気概はないと思われる。こそこそ逃げまわるばかりで、醜態を晒して終わりだろう。歴史に学べという言葉があるが、いくら学んだところで、それを実践するのは、本当に難しいのだ。

 


 

(著者略歴)

濱田浩一郎(はまだ・こういちろう)

 1983年生まれ、兵庫県相生市出身。歴史学者、作家、評論家。現在、大阪観光大学観光学研究所客員研究員。現代社会の諸問題に歴史学を援用し、解決策を提示する新進気鋭の研究者。著書に『日本史に学ぶリストラ回避術』『現代日本を操った黒幕たち』ほか多数

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