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風俗に厳しい岡山で「梅毒激増」教育県ゆえの問題が…
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.01.07 20:00 最終更新日:2023.03.04 17:01
近年、患者数が激増している「梅毒」。国内患者数は、長い期間1000人以下だったが、2013年以降に急増、2018年は7000人を超えるまでになっている。
「戦後、特効薬の『ペニシリン』で患者は激減。ほぼ出ない “幽霊病” といわれていました」
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そう解説するのは、性感染症に詳しい、尾上泰彦医師(プライベートケアクリニック東京院長)。“幽霊病” が、いまなぜ急増?
「梅毒の感染経路の大半は、性的接触です。増加原因は諸説あり、ひとつが外国人旅行者の増加。でも、国立感染症研究所のゲノム解析によれば、関連性は薄いとされています。
マッチングアプリの影響とする説もありますが、プライバシーに関わるため疫学的調査のしようがなく、断定はできません」(尾上医師)
そんななか、梅毒患者の爆発的増加で注目を集めるのが、岡山県だ。2013年まで年間数人だった患者数が、2017年には172人に増加。2018年に160人、2019年には173人(11月19日現在)と、勢いが止まらない。
2019年第3四半期(7~9月)の報告では、人口100万人あたりの届出数が26.0人となり、関西の大都市圏・大阪を上回って、全国2位となった。
「不明点が多く、あくまで推測」と前置きしながら、岡山県環境保健センターの望月靖所長が、本誌の取材に応じた。
「調査結果から、県内の梅毒患者のうち、男性は性風俗産業の利用に相当の関わりがあった。県内外で性風俗産業を通じて感染した方が、さらに性風俗産業に無関係のパートナー(おもに女性)に、感染を拡大させていることが推察される。
県全体で梅毒対策に取り組んでおり、医療従事者に対しても理解の促進を図っているため、結果として梅毒患者が多く報告されている可能性もある」
同県の調査では、感染経路は男性の約7割が風俗店、女性の約6割がパートナーとの性的接触だった。岡山市は啓発カード作成し、配布している。
岡山の “性事情” を、風俗情報誌『俺の旅』元編集長の生駒明氏に聞いた。
「岡山はいわゆる『教育県』で、風俗店の規制が厳しい。ソープの看板を掲げながら、“本番” がないほどです。
デリヘルは多いのですが、問題があるとすれば、その管理レベル。大都市のデリヘルでは、在籍嬢の性感染症検査をきっちりやりますが、地方の店は管理がゆるい。教育県ゆえに、『男女とも性教育の免疫がない』ともいえます」
岡山県での年代別の梅毒患者の割合を見ると、女性では20代が46%と約半数。男性は、20代から40代までがそれぞれ20%を超えている。
さらに、岡山県周辺でも増加傾向が。最新調査では、愛媛県が5位、香川県が6位だった。
「『岡山のデリヘルから香川のソープに移ったコが、梅毒になった』という話を最近聞きました。岡山にないソープを求め、香川を訪れる男性は少なくありません」(岡山県在住の風俗ジャーナリスト・吉岡優一郎氏)
尾上医師は、この数字を「氷山の一角」だと指摘する。
「梅毒は、診断した医師に届出の義務がありますが、多忙などを理由に届け出ないケースが多いとみられています。診療経験がない医師が多く、見逃すことも多い。罹っても痛みがほとんどないため、病院へ行かない人が多いのです」
梅毒は、感染から約3~5週間で性器などにシコリができる。その後、皮膚症状が手足をはじめ、全身的に出る(上の写真)。痛みや痒みがないため、知らぬ間に進行することも。
数週間の投薬で治るが、周囲への感染、特に妊婦への感染による「先天梅毒」の恐れもあるため、注意は必須。
「梅毒の感染力は強く、オーラルセックスでも感染します。不特定多数とのセックスを避けるのは当然ですが、なにより『この人は大丈夫』と思い込まないこと」(尾上医師)
新年早々、ハメを外しすぎないように。
※冒頭の図について
・国立感染症研究所作成「日本の梅毒症例の動向について(2019年第3四半期:2019年10月2日現在)」をもとに本誌作成
・「届出数」は、人口100万人あたりの2019年第3四半期届出数。人口は2015年国勢調査を使用
・表のカッコ内は、届出数の前年同期比(2019年第3四半期:2018年第3四半期)
(週刊FLASH 2020年1月7・14日号)