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元榮太一郎「僕の勝ち方」(1)弁護士ドットコムを起業
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.02.01 16:00 最終更新日:2020.02.03 14:37
●「困っている人と弁護士はwebでつながる」が新しい“常識”に
法律相談サイト「弁護士ドットコム」は、大阪弁護士会の規則に完全準拠することで運営上の安定性を高めることができたが、法人としての弁コムは、創業以来8期連続の赤字が続いた。
2009年頃からようやく、弁護士ドットコム事業に、徐々に収益化の芽が出始める。2009年12月、サイト内のいちサービスである「みんなの法律相談」で有料会員プランをスタート。続いて2012年には「弁護士ドットコムトピックス(現・弁護士ドットコムニュース)」を立ち上げ、ニュース配信をフックに集客力を高めていった。
そして2012年8月、目標にしていた「月間サイト訪問者数100万人」を達成した月に、創業以来初めて外部株主を受け入れる決断をし、デジタルガレージ社から1億円の資金調達を実施。弁コムは、株式上場に向けて大きく舵をきる。そして、ついに創業時からの “宿願” を叶えることに。
「サイトスタート当初から、受益者負担という視点からも『いつかは登録弁護士さんへの課金を』とは思っていました。ただ弁護士業界は、依頼を獲得するためのマーケティング費用を支払うことに、まったく無縁の世界でしたから、タイミングに慎重を期する必要があった。
まずは、ひとりでも多くの弁護士さんにサイトの存在を認めていただき、サイトに登録していただくために、『ギリギリまで待とう』と決めていたんです。
2012年の8月、自分なりの時代を読む肌感覚から『もうそろそろ、ご理解いただけるだろう』と判断し、弁護士さん向けの有料プランの準備をはじめました。もちろん適法性は重要ですから、すでに法的に認められていた登録掲載を『広告料』として頂戴するプランです。
準備にあたり、カカクコムで食べログの担当役員をされている村上(敦浩)さんに、アドバイザーになっていただき、1年かけて丁寧にプラン設計をしました。
食べログは、店舗情報の掲載は無料で、サイトの利用者数がある程度に達したところで店舗向けに集客を強化できる有料サービスを開始し、一気に収益化していた。その経験を教えていただきながら、2013年の8月に、月額『2万円』『3万円』『5万円』の3プランで、有料化に踏み切ったんです」
有料プランの販売を始めると、初月から数十件の売り上げがあった。そして2014年12月11日、弁コムは東証マザーズに上場を果たす。
「創業して間もない2005年末、東京の1万5000人の弁護士さんに登録セミナーのダイレクトFAXをお送りして、応募はたった1人でした。
でもその方は、うちのサイト経由で少しずつ相談者と会う機会を増やすうちに、どんどんやる気になられて、数年後には独立された。困っているユーザーの役に立つだけでなく、弁護士さんが変わっていく様子を見られるのは、なにより嬉しいものです。
創業から15年を経たいまでは、全国4万1000人のうち、1万7000人ほどの弁護士さんが、弁護士ドットコムに登録してくださっています。ちなみに僕も、弁護士ドットコムに登録はしていますが、『競合になってはいけない』と思い、どんなに収益が苦しくても、サイト経由では依頼を受けたことがありません。
弁護士法や弁護士業界の伝統をはじめ、たくさんの制限があるなかで、ひたすら地道にがんばってきて、本当によかった。“一見さんお断り” の世界から、業界内外のみなさんに応援していただきながら、『困っている人と弁護士はwebでつながる』という “新しい常識” を作ることができたのですから」
もとえたいちろう
1975年 米国イリノイ州生まれ 慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、1999年に旧司法試験合格、2001年からアンダーソン・毛利法律事務所(当時)にて企業法務弁護士として活躍。2005年1月に退職・独立し、同年8月に「弁護士ドットコム」のサービスを創業し、2014年12月11日に東証マザーズに上場。弁護士の起業家として注目を集め、『めざましテレビ』に金曜レギュラーとして出演するなど、メディアに多数出演。一方、2016年7月の参院選に千葉県選挙区から自民党公認候補として出馬し、当選。現在、弁護士・企業経営者・国会議員として活躍
※最新著書『「複業」で成功する』(新潮社)が発売中