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新型肺炎「自己防衛策」どこまでセーフ?どこからアウト?

社会・政治 投稿日:2020.02.06 06:00FLASH編集部

新型肺炎「自己防衛策」どこまでセーフ?どこからアウト?

1月29日、大阪市内で医薬品を大量に抱える中国人観光客

 

 猛威を振るう新型コロナウイルス。もし、訪れた場所や会社内で、咳き込む人がいたら、どうすればいいのか――。

 

 もちろん、人種差別や、過剰な隔離は許されない。そこで、波多野進弁護士(同心法律事務所)と藤川久昭弁護士(クラウンズ法律事務所)の2人に、「法律的にこれはセーフ? アウト?」を判断してもらった。

●議題(1)咳をしている中国人の客を「入店拒否」できるか?

「『中国人お断わり』と貼り出すのはもちろんアウト。しかし、明らかに体調が悪いと判断できる客なら、店側が断わることも可能でしょう。

 

 

 その場合、『伝染するおそれのある疾病をお持ちの方は、ご入店をご遠慮いただきます』と、入口などに “お知らせ” を出しておくべきです」(藤川氏)

 

 波多野氏も同様の見解だ。

 

「『体温が37.5度以上』など、明確な基準が定めてあるかどうかが重要です。その基準を示し、『感染が疑われる症状を示していると判断できるので、お引き取り願えますか』とお客に伝えることが、ギリギリセーフなラインです。

 

 店側に、『ほかのお客や従業員の健康を守るため』という正当な目的や義務もあり、公益性・公平性があれば、セーフといえます」(波多野氏)

 

●議題(2)中国人客が多い職場(百貨店など)で、上司から「マスクは着用禁止」と言われた。従う義務はある?

「『従業員が安全に働ける』環境を整えるのは、会社側の義務。たとえ就業規則に、『マスクの着用禁止』という項目があっても、従業員の安全が優先されるべきでしょう」(波多野氏)

 

 しかし、会社が強く出てくる場合もあるという。

 

「職場の決まりごとに違反すれば、懲戒処分などを受けることもあります。とはいえ、それが無効になる可能性も十分にあります。

 

 対抗策としては、上司に『労働契約法の安全配慮義務に違反しますよ』と言うことです。ただ、そこで話がもつれれば、裁判ということもあり得ます」(藤川氏)

 

●議題(3)自分が経営する店に、「武漢からの帰国便を俺が操縦した」と言うパイロットたちが……。彼らを退店させられる?

「そんなことを吹聴されたら、『この店には感染者がいる』のではないかという不安を与えることになって、店にとっては営業妨害です。

 

 あくまで店の判断ですが、『ほかの客を不安にさせないで』と、退店をうながすことはできるでしょうね」(波多野氏)

 

●議題(4)飲食店で、近くの席に咳をしている中国人観光客がいたら、「席を替えて」と頼める?

「頼むことはできます。『隣の席に喫煙者がいるから、席を替えて』と頼むのと同じです。ただ、店側にはその要望に応じる義務はなく、そこは店側の対応次第。新幹線や飛行機の座席でも同じです。空席があれば、替えてもらうように求められます」(波多野氏)

 

 客としてできるのは、せいぜい “お願い” までのようだ。

 

「客が、穏やかにお願いすることは問題ないですが、絶対にやってはいけないことは、『中国人だから』とか、特定の国籍、人種の方に対する偏見を持つことです」(藤川氏)

 

●議題(5)咳をしている友人と会ったら、新型肺炎に罹患した! 損害賠償請求はできる?

「その友人が、新型コロナウイルスに感染していたことが明らかで、その友人自身も感染を自覚している(または自覚しうる)ならば、請求できる可能性はあります。しかし、その2つを立証できなければ、認められないでしょう」(波多野氏)

 

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