別の地元紙記者が続ける。
「少なくとも、脇本氏の単独犯ではない証拠は、出回った捜査資料以外にもあります。管理のずさんさを改めるために、中央署では2017年11月7日、盗難に遭った金庫に監視カメラを設置しました。しかし、そのまさに前日、なんと『金庫の中に2000~3000万円ものお金が戻されていた』というのです。
当時、脇本氏はすでに亡くなっています。いったい誰が、そんな大金を金庫に入れたのか。まるで犯人が、一部を “返金” したかのようです。しかも、この件はいっさい公表されず、見つかった金の行方も不明だという、驚くような話なんです」
複数の証言から浮かび上がるのは、まるで何かを隠そうとするかのような、“複数犯行説” の強引な捜査中止だ。
3月11日、本誌は、共犯として捜査対象になっていたX氏が自宅から出てきたところを直撃したが、「(県警を)辞めて10年近くたつけえ、知らん。どこで(そんな話を)聞いたんや? わしは関係ない」と話すのみだった。
そもそも、このX氏もY氏も、本当に “共犯” だったのか、もちろんわからない。これすらも、県警が作り上げた “ストーリー” にすぎなかった可能性もあるのだ。
だが、「きちんとした結論が出ないまま、捜査が立ち消えになる」――県警内部から上がるのは、そうした異常事態への疑問の声だ。
広島県警広報課に取材を申し込むと、金庫に戻されていた大金の行方も含めて、「個別事件の捜査に関する具体的な内容については、お答えできません」と回答するのみ。
長年、警察内部の腐敗を取材するジャーナリストの寺澤有氏(53)はこう話す。
「警察が組織ぐるみで裏金を作り、幹部が私腹を肥やしているというのは、公然の秘密です。警察が何か問題を起こした警察官を取り調べる際、被疑者に “裏金の件をバラすぞ” と反発されると、とたんに弱くなる。だから警察は、身内の不祥事に甘いんです。
今回のケースでは、脇本警部補の単独犯とすることが、警察にとって、あらゆる意味で都合がよかったということでしょう。気になるのは、盗まれた8572万円の行方です。
このお金の取り分をめぐって、真犯人たちの間で “仲間割れ” でも起きない限り、関係した署員が口を割る動機はなく、真相は藪の中でしょう」
広島県警の自己都合で、この事件の “結論” を出したのだとすれば、県警の信用失墜は免れない。
(週刊FLASH 2020年3月31日・4月7日号)