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元榮太一郎「僕の勝ち方」(3)赤字会社の人心掌握術

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.03.20 16:00 最終更新日:2020.03.20 16:00

元榮太一郎「僕の勝ち方」(3)赤字会社の人心掌握術

 

 国会議員の所得ランキングで、ここ2年連続で2位にランクインしているのが、参議院議員の元榮太一郎氏(44、自民党)だ。

 

 弁護士資格をもつ元榮氏は、代表弁護士を務める「弁護士法人 法律事務所オーセンス(以下、オーセンス)」と、法律で困っているユーザーと弁護士をつなぐための法律相談サイト「弁護士ドットコム」をおもな事業とする、「弁護士ドットコム株式会社(以下、弁コム)」の創業経営者でもある。

 

 

 2005年の創業時から8期連続赤字の苦境を、低い離職率で乗り越えてきた元榮氏の「人事術」の源泉は、学生時代のアルバイトにある。

 

「大学2年の2月ごろから、『タートル先生』という家庭教師派遣センターで、営業のアルバイトを始めました。営業の仕事は、契約がきまったあとに家庭教師としてお子さんを教えることではなく、個人から家庭教師の契約を取ってくることです。

 

 当時はまだ、個人情報保護法がなかった時代でしたので、事務所にはいろんな種類の名簿が大量にあります。そのなかから、『今日は○○小学校の4年生』というふうに割り当てられて、ひたすら電話をしていく。

 

 訪問説明のアポがとれると、『アポ用紙』というシートに、お聞きした個人情報とともに、電話で話した感触でAからDまでの難易度判定をつけます。テレアポに慣れた段階で、今度は実際に、アポ先に営業に行くんです」

 

 元榮氏がバイトを始めた1996年当時は、携帯電話のナビもなく、アポ用紙を片手に地図を見ながら個人宅を訪問し、体験授業をおこなった。

 

「そこからは、“役者” ですよ。素晴らしい家庭教師をしっかりやりきる、決戦の場です。

 

『●●くん、はじめまして。会えてよかった。タートル先生の “家庭教師”、慶應大学の元榮太一郎です』と言いながらお宅にお邪魔して、まずはご自宅を褒めたりしながら、アイスブレイクの会話をします。

 

 体験授業では、どんなお子さんでも『楽しい』と思えるような、算数の “テッパン問題” を教えます。ひと通り問題をやり終えたところで、こう切り出すんです。

 

『●●くん、今日はどうだった? そうか楽しかったか。お母さん、いま聞きました? ●●くんって、今まで勉強が楽しいって言ったことありましたか? ないですか。

 

 わたくし、プロの家庭教師として言わせていただきますが、こういうタイミングで背中をポンッて押してあげるのが、お母さんの仕事ですよ』」

 

 そうして営業を続けるうちに、のちの経営者人生を支える “真理” に達する。

 

「いったんお別れして、僕がいないところで検討されると決意がさまよってしまい、だいたい決まらない。それで、その場で家計事情に合わせて『週◯回で△科目』というプランを設計し、サインと入会金2万円をいただいてくるまでの “即決” を、当日終えるようにしたんです。

 

 営業を始めて最初のうちは、自分でとったアポに行くのですが、3カ月もたつと、電話していないお宅にアポ用紙の情報だけを頼りに伺うようになります。営業は毎回が一球入魂で、体験授業も含めて2~3時間かかりますから、終わったときは汗びっしょり。

 

 これを大学4年の4月まで1年2カ月ほど続け、全部で約300軒を訪問しました。『即決戦略』のおかげで打率がよく、週2回で月10万円ぐらい稼いでいたかな。『はじめまして』から3時間で人の心を動かさないと契約はとれませんから、武者修行さながら、かなり鍛えられました」

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