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辛坊治郎「中国がやってるヤバいこと」ウイグル人は強制収容…

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.03.25 16:00 最終更新日:2022.12.07 19:10

辛坊治郎「中国がやってるヤバいこと」ウイグル人は強制収容…

新疆ウイグル自治区の「再教育施設」とされる建物(写真:AFP/アフロ)

 

 中国がヤバいです。前々から、天安門事件での民衆への発砲とか、南シナ海における領土紛争とか、尖閣諸島周辺海域への侵入とか、いろいろヤバい話はありましたが、どうやら次元の違うヤバい国であることが、くっきりと見えてきたんです。

 

 皆さん、想像してください。街頭で安倍政権の姿勢に反対するデモをしたり、ネットで政権批判の書き込みをしたり、それどころか、友人とのメールのやり取りのなかで、政治の批判をしただけで逮捕されて、収容施設に入れられて思想改造させられる社会を。

 

 

 これってあり得ないですよね。でも、中国ではそれがあるんです。今までも、そんなことを中国共産党政府がしているという噂はあったんですが、国際調査報道ジャーナリスト連合という組織が、中国の内部文書を手に入れ、2019年にアメリカのニューヨーク・タイムズがその内容を大きく報道したことで、中国の新疆ウイグル自治区で起きている少数民族弾圧が、世界の耳目を集めました。

 

 先に言っておきますが、中国政府はこの文書を本物と認めていません。しかし、多くの中国問題の専門家は、文書の形式、内容などから「本物」と信じています。

 

 外国のメディアが現地に行って、強制収容施設の内部などを自由に取材することは困難ですから、流出文書に書かれているひとつひとつの内容を検証することはできませんが、中国で取材経験のある記者がかつて小耳に挟んだことのある内容と文書の内容は、見事に符合しているんです。

 

 中国政府がこの文書を捏造だと主張するなら、新疆ウイグル自治区を外国メディアに自由に取材させることで、その主張を証明するべきでしょう。

 

■2014年に起こった「習近平主席暗殺未遂事件」

 

 さて、流出文書には何が書かれているのか?

 

 まず、誰を施設に収容するかを決めるのはAIです。多いときには、週に万単位のウイグル人が、官憲に突然拘束されています。警察のコンピュータが、ネット上の書き込み、メールのやり取り、会話、街中に設置された監視カメラなどの映像を自動で収集し、たとえば、イスラム教徒に特有のあごひげを生やしているとか、酒を飲まないなどの情報が、個人ごとに点数化されるんです。

 

 それが一定以上の点数に達すると、自動的に拘束対象になるんです。中国国内のウイグル人の人口は1000万人程度ですが、すでにその10分の1にあたる100万人が、収容施設に送られているそうです。

 

 中国政府が公式にその存在を認めている施設は、「職業技能教育訓練センター」と呼ばれていますが、名前のイメージとはかけ離れた、高い塀と監視所に囲まれた「刑務所」です。

 

 収容者には、携帯電話などによる外部との通信が完全に遮断された空間で、徹底した思想改造がおこなわれているらしいです。「らしい」と表現しましたが、ここに書いたことは、ほぼ事実とみられています。

 

 新疆ウイグル自治区の住民に対する弾圧が激しくなったのは、2009年に区都・ウルムチで起きた暴動事件で190人以上が死亡した後、中国政府がイスラム教徒のテロに危機感を持ったためといわれていますが、今のように苛烈になった背景には、ベールに包まれている「習近平主席暗殺未遂事件」があります。

 

 2014年4月、習近平主席が国家主席就任後、初めて新疆ウイグル自治区を訪れた際に、ウルムチ駅で大規模な爆発があり、約80人が死傷しました。じつはこの爆発は、列車で移動予定だった習近平主席を狙ったテロだったらしく、事前に中国の公安当局が情報を得て、習主席は急遽空路でウルムチ入りして難を逃れたようです。

 

 このテロに激怒した習主席が、ウイグル人に対する徹底した弾圧を指揮することになったというわけです。

 

 ウイグル人に限らず、中国が共産党政権に支配されて以降、「民族浄化」と言っても過言ではないほどの少数民族弾圧がおこなわれてきたのは常識とされていますが、前述のように、少数民族弾圧のための「マニュアル本」の存在が表面化するのは珍しいです。

 

 私はこの文書が漏れ出したこと、つまり、中国の現状を世界に知らせたいと考えている人が共産党内部にいる可能性に、ほんの少し希望を感じています。

 

 さて、ここまで書いたことは、中国が「国内でやっているヤバいこと」ですが、じつは2019年、「国外でやっているヤバいこと」が表面化しました。いくつかありますが、最大のものは、オーストラリアで起きた「事件」でしょう。

 

 ここで「事件」と書きましたが、オーストラリアの当局が動いているのは間違いないですが、今のところ誰かが逮捕されたわけじゃないので、カッコつきで「事件」と書いておきます。

 

 オーストラリアでは、2019年の5月に総選挙が実施されたんですが、その2カ月前に、一人の中国系オーストラリア人男性が変死しました。いまだに、この人物の死因は発表されていません。

 

■世界中で中国の意を受けた政治家が活動?

 

 この男性は死ぬ一年ほど前に、オーストラリアの諜報機関に接触していて、自分が中国の諜報機関から働きかけを受けて、総選挙に立候補させられそうだと訴えていたんです。

 

 この男性、自動車の販売業に失敗して多額の借金を抱えていて、中国の諜報機関の意を受けた中国人実業家から、7400万円ほどの資金援助と引き換えに立候補を迫られたらしいです。

 

 この事実関係をオーストラリアの人気報道番組が伝え、その日のうちにオーストラリアの諜報機関が事実関係を認めたために、世界的に大きなニュースになりました。中国政府は今のところ全否定ですが、オーストラリアの政府機関が、正式に事実関係を認めたことは重いです。

 

 このケースでは、中国の諜報機関と関係を持った男性が、オーストラリアの諜報機関に自ら接触したために表面化しましたが、そうでなければ、中国政府の息のかかった人物が、オーストラリアの国会議員になっていた可能性があるわけです。

 

 もしかすると、事実関係が表に出たこのケースが例外で、もうすでに、世界中で中国の意を受けた政治家が各々の国で、中国のために活動しはじめているのかもしれません。

 

 じつはこのやり方は、中国の専売特許(死語でしょうか?)というわけじゃなく、ロシアはかなり前から、東欧で似たようなことをやっています。

 

 前回のアメリカ大統領選で、トランプ陣営を勝たせるためにロシアが動いたんじゃないのって話は、アメリカ国内でさんざん報じられました。

 

 結局このケースでは、「明らかにクロ」という結論にはならなかったのですが、東欧諸国の政府内に、ロシアの意思が相当程度浸透しているのは間違いありません。

 

 その意味では、「中国はロシアに学んだだけ」っていえますが、今後の世界を考えたときに、中国がこの手法を使うことの恐ろしさは、ロシアとは比べものになりません。なにせ、現在の中国のGDPはロシアの約8倍もあり、使える資金力が違います。

 

 オーストラリアのような国を相手にする場合は諜報機関を駆使しますが、アフリカなどの独裁傾向の強い新興国や、南太平洋の小さな島国相手の場合、堂々と表のお金を援助名目で注入することによって、中国の支配を広めることが可能です。

 

 近年、台湾との外交関係を断って、中国と国交を結ぶ小さな国が増えているのは、これらの活動の成果なんですね。

 

 中国はひと言で言うなら、「日本のすぐ隣にある経済、軍事超大国」ですが、いろんな意味で、「それだけじゃないヤバい国」だってことを、私たちはよーく認識しておかなくちゃいけないんです。

 

 

 以上、辛坊治郎氏の新刊『日本再生への羅針盤:この国の「ウイルス」を撲滅するにはどうしたらいいのか?』(光文社刊)より引用しました。

 

●『日本再生への羅針盤』詳細はこちら

 

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