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インターンでハエ退治…カンボジアIT系大学を日本人学生が提訴へ

社会・政治 投稿日:2020.03.31 17:00FLASH編集部

インターンでハエ退治…カンボジアIT系大学を日本人学生が提訴へ

インターンシップ中の様子。土管を改造した宿泊施設を、学生がペンキ塗り

 

「AIやVRなどの最先端技術を用いた授業に、企業と連携したプロジェクト。英語も身につくし、これは『アツい!』と思って。それが、いざ入学したら、ペンキ塗りですから……」

 

 深々とため息をつくのは、キリロム工科大学の元学生・Aさん。聞き慣れない大学名に、首をかしげる方も多いだろう。

 

 同校が位置するのは、近年経済成長著しいカンボジア。首都プノンペンから車で約3時間の高原地帯「キリロム国立公園」の中にある、リゾート一体型の国際大学だ。当初、学生はカンボジア人のみだったが、2018年から日本人学生にも門戸を開いた。

 

 

「2014年に、『スタンフォードやMITに負けない大学』を謳い、日本人起業家が設立した大学です。授業料と生活費が実質無料となる奨学金制度を掲げ、IT人材を実践的に育成。『“カンボジアIT界の東大” を目指す』と、関係者は話していました」(ITライター)

 

 充実した学生生活を送っていることと思いきや、日本人学生の一部が、同校の提訴に向けて動いているという。

 

「まず愕然としたのは、受けられるはずのカリキュラムが、予定どおり実行されないこと。頻繁に講師の都合で休講になり、そもそもその講師陣も、定められた実務経験を満たさない人物が教壇に立っているんです」(前出・Aさん)

 

 募集要項では、「独自のインターンシップに参加できる」ことも特色として強調されていたが、これも、たんなる労働としか思えない内容だったという。

 

「ITに必要なプログラミングや、将来に繫がる実務経験ができると認識していました。でも実際にやらされたのは、併設するリゾート施設のペンキ塗りや、学食調理場のハエ退治。作業要員です」(同校の元学生・ Bさん)

 

 高校を卒業したての若者たちへの健康サポートも、安心できるものとは思えなかった。

 

「炎天下でも生肉をクーラーボックスに保管し、腐りかけの食材が寮の食事に出てきました。下痢、便秘は当たり前。食中毒や栄養失調で、体を壊す学生が絶えなかった」(同前)

 

 理想には程遠い実態に、日本人学生らは1年近く学校側へ改善を訴えつづけたが、聞き入れられることはなかった。やがて経営陣への不満を、外部へ発信する学生も現われる。そして、事件は起こった。

 

「2月27日、改善のための話し合いに招集された日本人学生の前に、日本人副学長らが地元警官や大学警備員を引き連れてあらわれ、突然学生たちを拘束したんです。彼らは、『携帯とPCの中身を見せなければ、カンボジアの法律により逮捕する』と脅しました」

 

 当時の様子を生々しく語るのは、同校の先端技術IT学科に所属していた日本人学生のCさん。

 

「『令状を見せてほしい』と頼みましたが、はぐらかされて。僕らが、大学に都合の悪い情報をこれ以上発信できないように、強硬手段に出たのでしょう」

 

 その後、日本人学生6名が、「捜査に協力しなかった」という理由で強制退学処分を受け帰国。現在に至るという。大学創立者である、猪塚武理事長に話を聞いた。

 

「我々も学生を守りたい立場なので、今回の件では心を痛めています。しかし、一部の学生たちがデマを言っていることは指摘したい。食中毒なんてまったくないし、学生の安全面は第一に配慮している。腐りかけの食事など、出すはずがありません。

 

 インターンシップなどのカリキュラムも、適正だったと思っています。退学処分については、懲戒委員会の調査に従ったものです」

 

 同校の支援者には著名人も多く、なかには国民民主党代表・玉木雄一郎代議士、元五輪アスリート・為末大氏の名前もある。だが、両氏とも「現時点ではコメントできない」と回答するのみだった。

 

 退学処分となった元学生らは、不当に退学させられたことに対する損害賠償請求訴訟を、近く起こす。

 

「私たちも反訴する予定です」(猪塚理事長)

 

 海外で夢破れた若者たちの、傷は深い。

 

(週刊FLASH 2020年4月14日号)

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