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辛坊治郎「iPS技術の進歩で臓器交換の時代がやってくる」

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2016.07.14 06:00 最終更新日:2016.07.14 06:00

辛坊治郎「iPS技術の進歩で臓器交換の時代がやってくる」

「これはすごいニュースです。人類の未来を変えるほどのインパクトあるニュースです。先ごろ、京都大学や理化学研究所など日本の4つの機関が共同で、他人のiPS細胞を使った移植手術に着手することを発表しました。もしこれが成功したら、将来、人類のたいていの病気や怪我を完全に治せるようになる可能性が生まれます。いや、それどころか、不老不死への第一歩かもしれません」

 

 と、ニュースキャスターの辛坊治郎氏。いったい、どんな研究なのか。

 

 日本には、現在70万人の「加齢黄斑変性」の患者がいる。この病気は、年を取るにつれて、目の奥の網膜が変性し、最初は視野の一部が歪んで見えるなどの症状が出て、最悪失明に至る。これまで有効な治療方法はなかった。

 

「ところが、2年前に神戸の理化学研究所が、患者の皮膚細胞から患者本人の網膜細胞を作り出し、それを患者に移植することで、病気の進行を抑えることに成功したんです」

 

 だが、問題も浮き彫りに。それは、患者の皮膚細胞を培養して、網膜組織を作って移植するまでにほぼ1年かかったこと。さらに、費用がざっと1億円にも上ったことである。

 

「1年かかっても、病気が治ればいいんですが、ほかの病気や怪我、たとえば事故で背中の太い神経の束が切れたような場合、これを再生してくっつけるためには、いち早く本人の神経細胞を注入する必要があるんです。つまり、事故が起きてから本人の細胞を培養したら、切れた神経が繋がらなくなっちゃう。同じように、緊急性の高い手術や移植には、残念ながらiPS細胞の技術って使えないんです」

 

 だが、冒頭で触れた4機関共同研究は、京都大学のiPS研究所にストックしてある特殊な細胞をもとに、移植臓器を作り出す。多くの日本人に免疫反応が起きにくい特別な遺伝子を持っているため、これをもとに作った臓器は、拒絶反応を心配せずに、誰にでも移植できる可能性があるという。

 

「これが成功するとすごいことになりますよ。だって、この『特別な細胞』からあらかじめ、神経、肝臓、心臓、骨など、人体のあらゆる組織を作っておけば、1年間かけて一から臓器を作らなくても、すぐに移植できるってことですからね。

 

 こうなると傷んだ臓器を、たとえばすり減った自動車のタイヤを交換するように、移植手術で取り替えて、どんどん若返るなんてことが十分可能になります。すごい時代がやってきます」

 

 ただし、誰がその費用を負担するのかという問題がある。前述のとおり、2014年の網膜移植の臨床試験でかかった費用は約1億円。今回の臨床試験の費用が1000万円だったとしても、現在70万人いる加齢黄斑変性の患者全員を治療したら7兆円もかかるのだ。

 

「この病気の患者さんの治療だけでこの費用です。将来、ほかの病気の皆さんが、iPS技術で作った人工臓器の『パーツ交換』をおこなう時代がきたら、日本の国民医療費はいったいいくらになるのか」

 

 近いうちにやってくるかもしれない「臓器交換できる時代」。あなたはその恩恵に預かることができるだろうか。

(週刊FLASH 2016年7月26日)

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