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殺人アリだけじゃない!日本に巣食う「侵略的外来生物」

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.04.07 16:00 最終更新日:2022.12.07 19:06

殺人アリだけじゃない!日本に巣食う「侵略的外来生物」

2019年11月、東京で500匹以上が発見されたヒアリ

 

 春の陽気で気温が上がり、「侵略的外来生物」が、我が国をじわじわと蝕みはじめている――。

 

 2019年11月、東京港の青海埠頭で500匹以上のヒアリが発見され、騒動となったことは記憶に新しいが、ヒアリは2017年6月以降、神戸、名古屋、大阪などの各港で次々と発見されてきた。すでに定着している中国、台湾、フィリピンに続き、日本にも定着することが危ぶまれている。

 

 

 

 南米が原産地のヒアリは、体長2~6mm。体色は赤褐色。尻に、非常に小さく目立たない毒針を持っていることが特徴だ。国立環境研究所に勤務し、日本の昆虫学の第一人者である五箇公一氏(55)が解説する。

 

「ヒアリは『火蟻』とも書くように、人間が毒針で刺されると、火傷したような激痛や、水疱状の腫れが生じます。さらに体質によっては、アレルギー反応でアナフィラキシーショックを引き起こし、死に至るケースさえあるほど。

 

 また、小型家畜を集団で襲ったり、配電盤の中に巣を作って、停電やショートを引き起こす原因にもなっています。農作物や在来の希少種を食い荒らし、生態系のバランスを破壊する、非常に厄介な昆虫なんです」

 

 日本では、侵略的外来生物に指定されているヒアリ。侵略的外来生物とは、生態系、人体、農林水産業などに悪影響を与える生物のなかで、ほかの在来生物を駆逐し、その領域を奪って拡大・増殖を図るなど、侵略性の高い外来生物のことを、とくにそう呼んでいるものだ。

 

 環境省のリストによると、現在、日本には100種類以上の侵略的外来生物が生息している。そのなかでも昆虫は、人間の身近な場所に生息しており、遭遇率も高く危険極まりない。たとえば、南米原産のアルゼンチンアリ。

 

「このアリは1993年7月、広島県廿日市市で初めて発見されました。毒性はないものの、農作物を食い荒らす農業害虫のアブラムシと共生し、農業被害を増大させています。

 

 繁殖力も旺盛で、女王アリは1日60個も産卵するなど、個体数は加速度的に増加しています。いまや生息域は、“点” から “面“ へと広がり、都府県で確認されています」(五箇氏、以下同)

 

 そして、ヒアリよりも厄介といわれているのが、豪州産のセアカゴケグモだ。名前のとおり、腹部や背に赤い帯状の模様があり、メスは強い毒を持っているという。

 

「人が刺されると、激しいうずきやかゆみ、熱傷した感じがあり、重症化すると、筋肉が麻痺を起こす場合もあります。海外では、死亡例もあるほどです。

 

 都内でも毎年のように発見され、いまや44都道府県、ほぼ全国に生息しています。さらに、メス1匹の生涯産卵数は最大5000個と、繁殖力も半端ではありません」

 

 アジア原産のツマアカスズメバチは、2012年に韓国フェリーの積み荷に交ざって、長崎県対馬市に初めて侵入した。

 

「在来のスズメバチと同じ毒を持っていて、人が刺されると皮膚が腫れ上がるほどの強い痛みを感じます。しかも性質は、きわめて獰猛で、トンボやニホンミツバチなどを食い荒らし、養蜂業者に甚大な被害を及ぼしているんです。女王バチを中心に、1mもの巨大な巣を作るのも特徴です」

 

 外来生物という言葉はよく聞くが、いつごろ日本に侵入したものを指すのか。

 

「一般的には明治以降、海外との交流が盛んになり、ヒト、モノと一緒に入ってきた生物を指します。それ以前に入ってきた生物は、長い歴史のなかで人間と共存してきたので、在来生物といわれてます」

 

 在来生物は、長い年月をかけて日本の環境に適応しており、我々の生活を脅かすことは、ほとんどない。ところが近年、脅威的存在となる外来生物が増え、環境や生態系をじわじわと蝕んでいるのだ。

 

 海外との人的、物的交流が拡大するのに比例して、ウイルス同様に、外来生物の侵入は避けられないのが実情だ。実際、青海埠頭で発見されたヒアリは、外国から寄港した貨物船に積まれていたコンテナに群がっていたのが見つかって、発覚したものだ。

 

 それにしても、なぜ100種類以上もの侵略的外来生物が、日本に入ってきているのか。

 

「第一に考えられるのは、『外来生物が定着するのに適した環境が整ってきた』ということです。具体的には、日本の砂漠化です。本来、ヒアリは乾燥した砂漠地帯にいるものですが、コンクリートやアスファルトで覆われた都会は、砂漠と似た環境で、ヒアリが住むのには適しているということなんです」

 

 原産地が南米である外来生物が定着しているのが、その証拠だ。ヒートアイランド現象による気温上昇や山林開発、あるいは建設ラッシュなどで、日本も徐々に砂漠化が進んでいるというわけだ。

 

 以下の関連リンクでは、日本に巣食う侵略的外来生物たちの特徴を紹介する。ウイルス同様、我々は今後 “未知なる生物” に悩まされるかもしれないーー。

 

取材&文・岡村青
写真・Science Source/アフロ

 

(週刊FLASH 2020年4月14日号)

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