電機メーカーのシャープは、政府が進める「マスク生産設備導入支援事業費補助金」の公募に参加し、採択された企業のひとつだ。3月24日から、三重県の工場で、1日に15万枚の不織布マスクを生産しているというが、そのゆくえは?
「もともと液晶ディスプレイの生産をしていた工場に、マスクの製造装置を導入しました。いずれ1日50万枚(月産1500万枚)に増産できるよう態勢を整えていますが、製品はすべて政府に向けて生産したものなので、配布先までは把握していません。おそらく医療機関だと思いますが……」(シャープ広報担当者)
日本国民が1日1枚マスクを使えば、月に30億枚以上が必要になる。たしかに増産はされているようだが、焼け石に水の状態なのだ。
そして、生産されたマスクが医療機関に優先的に供給され、市場に出回らない現状も見えてきた。ジャーナリストの村上和巳氏(50)は、「実際の医療機関での消費量は、我々の想像をはるかに超える」という。
「現在のような状況では、医師や看護師は、診察や治療にあたる患者ごとにマスクを替えていることも、まれではありません。1日に何十枚と使うこともあります。感染者が増えれば増えるほど、消費量も比例します。
さらにマスクは単価が安いため、運送会社にとっても割に合わず、業者が積極的に参入する商品ではありません。小売りに出回りづらいのは、流通が弱いのも原因ではないでしょうか」
同じく物流の課題を指摘するのは、流通経済大学流通情報学部の矢野裕児教授(63)だ。
「マスクを中国から航空便で輸入するのが、いちばん早いのですが、コロナの影響で航空貨物は止まったままです。船便は動いていますが、日本に届くのに2~3週間はかかります。日本政府がコントロールしないと、マスク不足は解消されないでしょう」
すでに韓国・台湾が、マスクの安定供給を実現させているなか、浮かび上がってくるのが、日本政府の力不足だ。
「マスク不足に対応するため、3月上旬に、厚生労働省・経済産業省・総務省の官僚総勢40名で構成された “政府マスクチーム” が立ち上がりました。
しかし、チームは具体的な施策を提案できず。業を煮やした安倍晋三首相に、佐伯耕三秘書官と今井尚哉補佐官が、悪評を買っている “布マスク2枚配付案” を囁いた、という始末です」(政治部記者)
一方、自民党内からは、“布マスク2枚” が悲しくなる話も漏れ聞こえてくる。
「党本部にマスクが備蓄してあるので、党の職員には配ってくれるんですよ。先週、私も20枚入りパックをもらいましたよ」(自民党関係者)
この件について、自民党総務局に問い合わせると、こう回答を寄せた。
「職員にまとまった数を配っている事実はありません。ただし、会議や会合がおこなわれる際に、マスクをせずに参加する議員や職員には配布しています」
災害に備えてきたことは素晴らしい。だが、我々一般市民がマスク枯渇に苦しむ “現実” は見えているのだろうか。民間はマスク不足解消に、やれることはすべてやっていた。だが、そこに国の影はあまりに薄い。
(週刊FLASH 2020年4月28日号)